研究概要 |
本研究では,下水処理汚泥の焼却灰をガラス化し,酸処理を行うことで,含有されるリンの再資源化を試みた。なお,リンを化学肥料として再資源化することを想定した場合,アルミニウムは土壌中でリンと不溶性の塩を形成し,植物の生育を阻害することが知られている。単純な回収量だけではなく,リンをアルミニウムと分離・回収することが望ましい。 本研究では,国内2箇所の下水処理施設から排出された汚泥の焼却灰(汚泥A, 汚泥B)を実験に用いた。また,汚泥AにSiO2を添加(重量比で汚泥A:SiO2= 9:1, 8:2, 7:3)した系についても実験を行った。溶融条件は1,500℃-30 min,大気雰囲気,アルミナ坩堝,バッチ量10 gで行った。溶融後,プレス急冷によりガラス化した。作製したガラスを150 μm以下に粉砕し,塩酸25 mlに浸した後に,吸引ろ過により固液分離を行った。 2年目までの研究では,SiO2添加により塩酸浸漬時の溶出挙動に変化が認められた。しかし,都市ゴミ溶融スラグで見られたような,構成成分の選択的な分配挙動は見られなかった。この原因として,下水処理汚泥に大量に含まれる鉄分の影響を考えた。鉄分の含有量を減らすことで,都市ゴミ溶融スラグと同様な分配挙動の発現が期待される。そこで,鉄分を除去する方法として,還元雰囲気で溶融し,鉄分を金属鉄として析出させ,汚泥の融体と分離することを考えた。下水処理汚泥と同様に鉄分を多く含有する鉄鋼スラグを還元溶融したところ,金属鉄を分離析出させることができた。しかし,汚泥Bを同様に還元溶融したが,微量の金属しか析出しなかった。還元溶融の条件の最適化が必要と考えられる。
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