研究課題/領域番号 |
23560996
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研究機関 | 奈良工業高等専門学校 |
研究代表者 |
中村 秀美 奈良工業高等専門学校, 物質化学工学科, 教授 (70198232)
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研究分担者 |
岸本 昇 和歌山工業高等専門学校, 物質工学科, 教授 (50280433)
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キーワード | 吸着 / イオン交換 / リサイクル / 有価物回収 |
研究概要 |
使用済み二次電池の正極材にはニッケル、コバルト、マンガンを加えた3元素が含まれているが、原料のコバルトが高いうえ、コバルトを回収し再生するのに高コストがかかる欠点があった。本研究では吸着法に着目し、イオン交換繊維を用いて廃棄二次電池の正極部分に含まれるコバルトをpH 操作のみで完全に吸着分離・回収・資源化することを目指し、検討を行った。 今年度は昨年度検討した架橋キトサン繊維およびイオン交換繊維による金属イオンの吸着平衡特性の結果と不織布への加工のし易さから、市販のイオン交換繊維を選択し、さらに詳細な平衡特性と分離特性を検討した。 弱アニオン性イオン交換繊維によるニッケル、コバルト、マンガンの金属イオン吸着量のpH依存性は、ニッケル、コバルトはpHの増加とともに吸着量が増加し、中性付近ではコバルトとニッケルの吸着量にあまり差が見られなかった。pH=2ではニッケルは吸着されないが、コバルトは吸着されることがわかった。また、マンガンはどのpHであってもほとんど吸着されないことから、マンガン、ニッケルとコバルトの分離は容易に行うことができ、酸性条件下ではコバルトのみを溶液中から分離できる可能性が示唆された。キレート繊維ではニッケルとコバルトが吸着され、マンガンが吸着されないことが分かった。 キレート樹脂によるカラム法での3成分系の吸着・溶離実験において、コバルトとニッケルの吸着速度に違いがあること、脱着速度が速いことから、速度差を利用したコバルトとニッケルの分離の可能性が示唆された。 さらに、イオン交換繊維を布状に加工し、全く新しい発想に基づく布状繊維を用いたベルト式連続吸着分離・回収装置を製作した。廃棄二次電池の正極部分に含まれる3元素を溶解したモデル溶液を用いて、溶液濃度やベルトの移動速度などを変化させて、多成分系金属イオン溶液からのコバルトの分離回収を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
弱アニオン性イオン交換繊維、キレート繊維を用いたニッケル、コバルト、マンガンの金属イオンの平衡特性、分離特性の検討結果から、廃棄二次電池中に含まれるコバルトをpH操作のみで分離できることが明らかになった。 さらに、イオン交換繊維を布状に加工し、全く新しい発想に基づく布状繊維を用いたベルト式連続吸着分離・回収装置を製作し、廃棄二次電池の正極部分に含まれる3元素を溶解したモデル溶液を用いて、溶液濃度やベルトの移動速度などを変化させて、多成分系金属イオン溶液からのコバルトの分離回収を試みた。
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今後の研究の推進方策 |
布状繊維を用いたベルト式連続吸着分離・回収装置を用いたコバルト分離実験を進め、最適操作条件や問題点を明らかにしていきたい。また、キレート繊維を用いた3成分の吸着平衡関係で、酸性条件下ではニッケルのみが吸着することから、弱アニオン性イオン交換繊維とキレート繊維を組み合わせることで、3成分の混合溶液から単成分を効率よく分離できる可能性があることが分かったので、これらの膜を組み合わせた分離特性についても検討したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
廃棄二次電池を溶解するための硫酸やモデル溶液作製のための試薬類、原子吸光分析装置での分析に必要なアルゴンガス、分離・回収装置の改良等の消耗品費と学会発表用の旅費として使用予定である。
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