研究課題/領域番号 |
23560998
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
波多野 雄治 富山大学, 水素同位体科学研究センター, 教授 (80218487)
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研究分担者 |
赤丸 悟士 富山大学, 水素同位体科学研究センター, 助教 (10420324)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | プラズマ・壁相互作用 / 機器分析 / 薄膜 / 表面・界面 / プラズマ応用 / 水素同位体 / ヘリウム / 深さ方向分析 |
研究概要 |
核融合炉プラズマ対向材料には、燃料である重水素・トリチウムと共に核融合反応生成物であるHeが入射する。Heは材料中へほとんど溶解せず、バブルの形成等を通して表面近傍の微細組織を大きく変化させるため、プラズマ対向材料の特性に及ぼすHeの影響を明らかにすることは重要な課題である。しかしこれまで、材料中のHe分布を効率的に測定する手段はなかった。そこで今年度は、プラズマ対向材料として有望視されているタングステンに室温で5 keVのHeイオンを注入し、グロー放電発光分析法(GDOES)による検出を試みた。まず一般的に用いられるArプラズマで測定したが、Heを検出することはできなかった。Heの発光励起には20 eV以上のエネルギーが必要であるが、この値に比べてArのイオン化エネルギー(15.759 eV)が小さく、Arでは十分にHeを励起できないと考えた。そこで、よりイオン化エネルギーが大きいNe(21.564 eV)のプラズマを用いて条件を探索した。その結果、大口径アノード(10 mm)を用いて高圧・高パワー放電(1200 Pa, 80 W)を行うことで、研究代表者が知る限り世界で初めてGDOESにより固体試料中のHeを検出することに成功した。タングステン中へのHe注入量とHe発光強度の関係を調べたところ、数原子%程度以上の濃度であれば検出できることがわかった。今後、より検出感度を向上させるため、さらに測定条件を詳細に探索する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最重要課題の一つであるGDOESでの固体中のHeの検出に世界で初めて成功した。この成果は国際会議で報告されると共に、論文としてまとめられ、既にインターネット上で公開されている。以上の成果を踏まえ、おおむね当初計画通りに順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
プラズマ粒子によるスパッタリングで対向材料表面に形成される堆積層の分析を想定し、既設のDC グロー放電スパッタ装置を用いて軽水素・重水素・He を含む堆積膜試料を作製し、構成元素の深さ方向分布をGDOES により測定する。並行して、昇温脱離法による軽水素・重水素・He の全量測定を行う。また、軽水素・重水素・He 以外の元素については、感度係数が既知のX 線光電子分光法(XPS)や核反応法(NRA)による深さ方向分析を行う。昇温脱離法およびXPS・NRA法で得られる濃度情報をGDOES で得られる深さ方向分布にフィードバックし定量的濃度分布に変換すると共に、主要なプラズマ対向材料構成元素についてGDOESにおける感度係数を決定する。光学窓の汚染等で各元素の相対感度が安定しない可能性もあるが、その場合には適切な標準試料の調製法を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究に必要な設備備品は既に富山大学水素同位体科学研究センターおよび自然科学研究支援センター機器分析施設に既設であり設備備品費は不要なので、物品費は主に試料、試料調製に必要な消耗品(研磨剤等)、ガス類の購入にあてる。平成24年度以降はGDOESで得られる深さ方向分布の定量化にも力を入れるので、GDOES測定と並行して、定量方法がより高精度に確立しているXPSやNRAによる測定を実施する。これらの測定およびデータ解析ならびに試料調製のための研究補助者の人件費・謝金の使用を予定している。加えて、研究成果を速やかに公表するための学会参加旅費および論文印刷費を使用する。次年度使用額(28,055円)は主に旅費や消耗品費の年度当初見積額との差額の累積により生じたが、これは主に上述の消耗品費に充当する予定である。
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