研究課題/領域番号 |
23561003
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
石澤 明宏 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (30390636)
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キーワード | プラズマ / 乱流 / 核融合 / 運動論 / シミュレーション / 電磁的 / 有限圧力 |
研究概要 |
前年度に、国内で初めてこの電磁的な乱流の運動論的シミュレーションが可能なシミュレーションコード(強い磁場の下でのボルツマン方程式を直接シミュレーションするコード)を開発しました。今年度はこのシミュレーションコードを用いて電磁的な乱流の揺動は圧力が低い場合と大きく異なることを発見しました。そして、計画通りこの成果を第24回IAEA核融合エネルギー会議で発表しました。この研究成果は平成25年4月9日に行われた核融合科学研究所のプレス発表 http://www.nifs.ac.jp/press/130409.html で紹介されたので、その発表のために準備した資料をもとに以下に説明します。 --高圧力プラズマ中に発生する乱れのシミュレーションに成功--(スーパーコンピュータの性能向上と新たなシミュレーションコード開発により核融合プラズマ内で発生する複雑なプラズマの乱れの把握が可能に)核融合発電を実現するためには、ドーナツ型の磁場の籠の中に高温のプラズマを安定に閉じ込める必要がありますが、プラズマの圧力が大きくなると乱れた流れ(乱流と呼ばれる)が発生し、粒子や熱が圧力の高いプラズマ中心から圧力の低い周辺に向かって吐き出され、プラズマ閉じ込めの妨げになります。核融合科学研究所では、国内で初めてイオンと電子両方の運動を解く数値シミュレーションコードを開発したことにより、従来理解されていなかった高圧力プラズマにおける乱流の様子が明らかになりました。この成果によりイオンや電子の熱がどのような速さで吐き出されるかを調べることが可能になり、プラズマを安定に閉じ込める研究が進展しています。この研究成果を、国際ジャーナルNuclear Fusion, 053007 (2013)に発表しました。また、招待講演としてIAEA技術会合(2013年5月27-29日、ウィーン)で発表する予定です。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
核融合トーラスプラズマにおいてプラズマベータ(無次元化した圧力)が有限な場合、最も研究されてきたイオン温度勾配不安定性が駆動する乱流(ITG乱流)は安定化される傾向があります。典型的な計算では、ベータ値が1%を超えるとITG乱流は安定になり粒子・熱輸送に寄与しなくなり、他の電磁的な不安定性が乱流を駆動します。ITERなどの大型核融合トーラスプラズマ装置ではプラズマベータは数%になるため、この電磁的な乱流の理解が必須です。 研究代表者は、国内で初めてこの電磁的な乱流の運動論的シミュレーションが可能なシミュレーションコード(強い磁場の下でのボルツマン方程式を直接シミュレーションするコード)を開発する目標は達成しました。そして、電磁的な乱流の揺動は圧力が低い場合と大きく異なることを発見しました。これを国際会議IAEA核融合エネルギー会議で発表するとともに、国際ジャーナルNuclear Fusionに発表して、成果発表という点においても計画通り目標を達成しました。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに、申請時の計画通りに、電磁的ジャイロ運動論シミュレーションコードの開発を進め、研究成果を得ています。今後は、学会の招待講演に積極的に応募し、得られた成果を効率的に発信する予定です。 今後の研究では、トカマクおよびヘリカルプラズマにおける熱・粒子のプラズマベータ依存性を電磁的ジャイロ運動論シミュレーションを用いて調べ、得られたベータ依存性を論文に発表する計画です。特にヘリカル系の電磁的ジャイロ運動論シミュレーションでは大型ヘリカル装置の実験配位を用いる計画です。このシミュレーションは計算コストが大きいためシミュレーションコードの高速化も同時に進める予定です。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究代表者が、主に以下の会議で発表を行うための旅費および参加費として使用する計画です。 招待講演としてIAEA-Technical Meeting (2013年5月27-29日、ウィーン)で発表する予定です。この会議で有限ベータプラズマにおける乱流輸送に対する研究成果を発表するとともに、ヨーロッパのジャイロ運動論シミュレーション研究者(特にマックスプランク研究所の理論シミュレーショングループ研究者)と議論を行う予定です。また、第55回アメリカ物理学会プラズマ分科会(2013年11月11日―15日、デンバー(アメリカ))の招待講演に申請する予定です。この会議においてアメリカのジャイロ運動論シミュレーション研究者(特にジェネラルアトミクスの理論シミュレーショングループ研究者)と議論を行う予定です。
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