研究課題/領域番号 |
23561003
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
石澤 明宏 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (30390636)
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キーワード | プラズマ / 乱流 / 核融合 / 運動論 / シミュレーション / 電磁的 / プラズマベータ / 輸送 |
研究概要 |
電磁的ジャイロ運動論シミュレーションコードを開発し、トーラス型核融合プラズマにおける乱流によるイオンおよび電子の熱および粒子輸送を評価可能にした。そして、現在までに、乱流輸送のプラズマベータ(プラズマ圧力)依存性を定性的に明らかにした。さらに開発を進め、実験で観測される磁場、密度、温度分布を入力する電磁的乱流輸送評価を可能にした。トカマクおよびヘリカル型核融合実験装置の有限ベータ(圧力)プラズマにおいて、乱流を駆動する不安定性は、低ベータでドリフト波不安定性、有限ベータで運動論的電磁流体不安定性であり、プラズマベータが2から3%程度でドリフト波不安定性から運動論的電磁流体不安定性に遷移することを明らかにした。そして、有限ベータプラズマにおける乱流の飽和機構を新たに発見した。さらに、運動論的電磁流体不安定性に駆動された乱流は、ドリフト波不安定性に駆動された乱流と比較して、乱流拡散効果が低いことを明らかにした。また、電磁的ジャイロ運動論シミュレーションコードを開発した結果、トーラス型核融合プラズマにおける乱流のマルチスケールシミュレーションおよび基礎物理の理解に大きな進展をもたらした。たとえば、イオンスケール乱流と電子スケール乱流を同時に行うシミュレーションを可能にした。さらに、有限プラズマベータにおいて重要となる磁場揺動効果の中で特に磁気リコネクションについて新しい知見を得た。これらの乱流輸送のプラズマベータ依存性に対する研究成果をアメリカ物理学会の招待講演、IAEA-技術会合の招待講演、プラズマシミュレータシンポジウムの招待講演、East-Asian School の招待講演、Turbulence, Transport and Structures in Magnetized Plasmasの招待講演として発表した。また、核融合科学研究所のプレス発表として公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来、電子の断熱応答を仮定した(プラズマベータが0と仮定することを含む)シミュレーションコードを拡張し、乱流輸送のプラズマベータ依存性を解析可能な数値シミュレーションコード(電磁的ジャイロ運動論シミュレーションコード)を開発した。このシミュレーションコードを用いて乱流輸送のプラズマベータ依存性を定性的に明らかにした。具体的には、1)プラズマベータが2から3%以下ではドリフト波不安定性、それ以上では運動論的電磁流体的不安定性が乱流を駆動すること、2)運動論的電磁流体的不安定性が駆動する乱流の飽和機構、3)運動論的電磁流体的不安定性が駆動する乱流が引き起こす乱流拡散はドリフト波不安定性が駆動する乱流と比較して小さいこと、を明らかにした。さらに、シミュレーションコードの拡張により、実験で観測される磁場、密度、温度分布を入力として電磁的な乱流による熱・粒子輸送を定量的に評価することを可能にした。これらの電磁的乱流の研究成果が評価され、2014年ITER夏の学校(エクサンプロバンス)に講師として招待された。また、「研究実績の概要」で述べたように、1年間で、アメリカ物理学会をはじめ5つの会議で招待講演を行うとともに、国際ジャーナルNuclear FusionおよびPhysics of Plasmasに6本(そのほかの雑誌を含めると9本)の査読付き論文を掲載した。したがって、研究成果発表という点においても計画通り目標を達成した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに、乱流輸送のプラズマベータ依存性を定性的に明らかにした。現在、シミュレーションコードは、実験で観測された磁場、密度、温度分布を入力するものに拡張され、乱流輸送の定量的評価が可能になった。今後は、拡張されたシミュレーションコードを用いて、トカマクおよびヘリカルなどのトーラス型核融合プラズマにおいて、乱流によって生じるイオンおよび電子の熱および粒子輸送を定量的に評価する。特に核融合科学研究所大型ヘリカル装置における有限ベータプラズマの熱および粒子の乱流輸送を定量的に評価する。そして、実験結果との比較を行いつつ乱流輸送のプラズマベータ依存性を理解する。すでに得られた初期的な結果を第25回IAEA核融合エネルギー会議(サンクトペテルブルグ、2014年)において発表予定である。さらに、有限ベータ(圧力)効果によってドリフト波不安定性の一種であるイオン温度勾配不安定性が抑制されることについて体系的にまとめることにより、ベータ増大に伴う乱流輸送の増減についての予測を示す。そして、2014年ITER summer school における招待講演において、現在までに達成された研究成果をまとめるとともに国内外における乱流輸送のプラズマベータ依存性に対する研究成果をレビューする。
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次年度の研究費の使用計画 |
マルセイユ(フランス)で開催された会議「Turbulence, Transport and Structures in Magnetized Plasmas」は招待講演であったため、主催者から滞在費が支給された。その結果、当該年度の研究費が当初見込みより減少した。 以下に挙げる2回の海外出張を予定しており、主にこれらの会議の旅費として使用する予定である。 1、第25回IAEA核融合エネルギー会議(サンクトペテルブルグ、2014年) 2、2014年ITER夏の学校(エクサンプロバンス)
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