研究課題/領域番号 |
23561003
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
石澤 明宏 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (30390636)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | プラズマ / 乱流 / 核融合 / 運動論 / シミュレーション / 電磁的 / プラズマベータ / 輸送 |
研究実績の概要 |
磁場閉じ込め核融合実験装置内に生成されるプラズマで発生する乱流は、従来の運動論シミュレーションでは、プラズマ圧力(ベータ)が低い極限を仮定して研究されてきた。我々は電磁的ジャイロ運動論シミュレーションコードを開発し、有限圧力プラズマに発生する乱流によって生じる粒子および熱輸送の評価を可能にした。そして、この新たに開発したシミュレーションコードを用いて乱流による輸送の圧力依存性(ベータスケーリング)を調べ、以下の依存性を示した。低ベータ(低圧力)ではイオン温度勾配不安定性が乱流輸送を引き起こし、中ベータ(1%程度)ではイオン温度勾配不安定性が磁場揺動により安定化され、捕捉電子モードが乱流を引き起こす。さらに圧力が高い高ベータ領域では、MHD不安定性の一種である運動論的バルーニングモードが乱流輸送を引き起こす。これらの低、中、高圧力領域での乱流の飽和機構は明らかになっていなかった。低圧力極限で乱流の飽和状態(準定常状態)においては、自己組織化によって生成される帯状流が支配的な役割を果たしていた。圧力が有限な場合、自己組織化によって生成される帯状流は弱いことが明らかになるとともに、帯状流生成以外の乱流飽和機構が明らかになった。帯状流以外の乱流飽和機構はさまざまであり、未解明な部分も残されている。ひとつの飽和機構は、乱流の磁力線方向の構造が非軸対称性磁場に捕捉された粒子によって変化することに起因する。この成果はアメリカ物理学会招待講演論文になるとともに論文誌Phys. Plasmas のEditor’s Choice に選ばれた。また所属研究所からプレス発表された。そして、乱流輸送のベータ依存性の研究成果をレビューとしてまとめITER International Schoolにおいて招待講演するとともにJournal of Plasma Physics誌に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
順調に進展している理由として(1)シミュレーションコードの開発に成功、(2)乱流の圧力(ベータ)依存性を解明、(3)研究成果の招待講演及び論文発表、の三つを挙げる。具体的には、(1)圧力が有限な場合も適用可能なジャイロ運動論シミュレーションコードの開発に成功した。(2)このシミュレーションコードを用いて磁場閉じ込め核融合プラズマにおける圧力が有限な場合の数値シミュレーションを行い、乱流によって生じる粒子および熱の輸送の圧力依存性(ベータスケーリング)を明らかにした。物理的には、圧力が有限な場合に帯状流生成という自己組織化が極めて弱くなり、他の乱流飽和機構があることを明らかにした。(3)これらの成果を、アメリカ物理学会を含む6つの国際会議で招待講演として発表した。そして、これまで順調に進展した研究によって得られた乱流輸送のベータ依存性に関する成果をレビューとしてまとめた論文を含めて14編の査読付き論文を発表した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は有限圧力プラズマにおける乱流輸送の定量的評価の精度を高めるべく実験観測との比較を進める。また、高圧力領域で乱流が飽和する機構が理解されていないため、この飽和機構の理解を目指したジャイロ運動論シミュレーションを進める。この結果を、国際会議International Conference on Numerical Simulation of Plasmas において発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度の海外旅費使用予定会議であるITER International School (2014)へは招待講演者として招聘され、主催者が旅費および滞在費の全額を負担した。その結果、当該年度の研究費が当初見込みより減少した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は以下に挙げる2回の海外出張を予定しており、主にこれらの会議への旅費として使用する予定である。 1、International Conference on Numerical Simulation of Plasmas(アメリカ、2015年8月) 2、20th International Stellarator-Heliotron Workshop(ドイツ、2015年10月)
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