研究課題/領域番号 |
23561005
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
岡村 昇一 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (60115540)
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研究分担者 |
鈴木 康浩 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (20397558)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | ヘリカル磁場配位 / 磁場配位最適化 / 最外殻形状 / フーリエモード |
研究概要 |
核融合科学研究所の大型ヘリカル装置(LHD)の磁場配位を例にとり、実験で採用しているいくつかの代表的な配位の最外殻形状をフーリエ分解し、それぞれの磁場配位の持つ閉じ込め特性が最外殻形状のフーリエ係数のどの要素と結びついているかについて解析した。代表的な配位としては、磁気軸位置が3.6, 3.75, 3.9 mの配位を選び、閉じ込め特性として、捕捉粒子のドリフト軌道の性質とMHD安定性をもたらす磁気井戸の深さについて検討した。実験で用いられる配位を表現する100以上のフーリエ係数の中から、係数の絶対値の大きなものを残すことにより、それぞれの配位の特性を与えているフーリエ係数を導き出した。その結果から、配位の特性の違いを決定付けているフーリエ係数は、トロイダル・モード数n=1、ポロイダル・モード数m=0の成分であり、物理的には立体磁気軸配位を形成するために必要となる、ヘリカル軸構造のモードであることが明らかになった。このことは、平面磁気軸構造として知られているヘリオトロン型磁場配位においても、立体磁気軸配位の構造が重要な要素であることを示している。さらに解析を進めた結果、n=1、m=2のフーリエ係数も、LHDの磁場閉じ込め特性の違いを与える重要な要素であることがわかった。これらの二つのモードを自由に組み合わせることにより、新しい磁場配位を導き出すことも可能である。適切な係数の値の組み合わせを探すことにより、捕捉粒子軌道の最適化と磁気井戸形成とを同時に満たす配位を設計することにも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
LHD実験の磁場配位について、その最外殻形状のフーリエ係数と閉じ込め特性との関係を明らかにする、という研究目的については、かなり当初の目標を達成できたと考える。閉じ込め特性を決定付けているフーリエ係数が、予想に比べて非常に少ない数であったことは、物理的には予想外におもしろい結果であった。しかし、磁場配位解析が真空磁場配位に限定されており、実験研究において重要な有限ベータ配位にまで到達できなかった点は、研究成果として不満の残るところである。この点において、達成度が「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
LHD磁場配位については、真空磁場配位の解析から有限ベータ配位の解析に研究を進める。有限ベータ平衡配位の計算法には、質的に異なる二つの計算コードがあり、それらの比較も含めて多くの平衡配位を比較する必要がある。その次のステップとしては、LHD装置から研究対象の範囲を広げて、同種のタイプのヘリカル装置であるCHS装置の磁場配位を分析することにより、トロイダル周期数の違いからもたらされる特性の変化、またアスペクト比の違いによる効果等を解析する。これらの解析研究を進めると同時に、平成23年度に整備することができなかった解析計算のためのワークステーションを購入し、磁場配位の最適化研究もスタートさせる計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
磁場配位計算のための小型科学計算用サーバーを平成23年度に購入する計画であったが、サーバー機種の選定に時間がかかったために、年度当初に購入することができなかった。一方、世界的なワークステーション市場において、タイでの洪水被害による部品供給が滞っていたために、最適と判断したモデルの納入時期が非常に遅れるという事情も重なり、平成23年度中での購入を断念した。平成24年度においては、年度を繰り越しされた資金も活用して、計算能力の高いモデルを選定し、磁場配位最適化計算に適した計算資源を用いて研究を進めて行く計画である。
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