研究課題/領域番号 |
23561005
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
岡村 昇一 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (60115540)
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研究分担者 |
鈴木 康浩 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (20397558)
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キーワード | ヘリカル閉じ込め / 磁場配位最適化 / 最外殻形状 / Fourier係数 / ヘリカル軸配位 |
研究概要 |
研究計画3年目の課題は、LHD装置の磁場配位の分析から得られた物理的理解を、世界のヘリカル装置の極めて多様な磁場配位に対して適用し、ヘリカル配位の総合的な理解を目指す研究である。まずLHD装置の磁場配位の分析に用いた、最外殻形状の二重Fourier分解に用いた係数を数学的に集約することによって、さらに磁場配位の物理的閉じ込め特性に直結した形状因子を用いることとした。数学的には複素数空間でのFourier分解を行うことと等価であるが、装置の特長を表すための係数がおよそ半分の数で足りることになる。その結果LHD装置の磁場配位の特長を、たった三つの係数でほぼ表現することが可能となった。この表現方式を他のヘリカル装置の磁場配位に適用すると、例えば非常に複雑な構造を持つとされているドイツのWendelstein 7-X装置の場合でも、9個の係数でその構造的特長を表現することができる。多くの異なるヘリカル形式のトーラス閉じ込め装置において、どの場合においても閉じ込め性能を基本的に決定する幾何学的な要素はヘリカル軸構造のモードである。この係数のみを変化させて、いくつかの代表的なヘリカル装置の閉じ込め性能を比較した。この係数の符号の正負は、ヘリカル軸構造の回転のフェイズと楕円断面の回転のフェイズとの間の差を示しているが、どの装置においてもこのフェイズ差が正の値の時に、新古典輸送特性が改善されることがわかった。それに対してどのフェイズ差において磁気井戸が形成されるかは、装置による差が現れる。LHD装置では磁気井戸の形成は、新古典輸送特性改善とは逆の符号において実現されており、この結果がMHD特性と輸送特性との両立を阻む結果となっている。LHD装置では、このような特性の一致を目指した配位改善が今後の課題となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画における3年目の課題は、世界の多くのヘリカル閉じ込め研究において用いられている多様なヘリカル磁場配位を、統一的な手法において分析・比較することであった。研究成果としてはほぼ目的通りの結果が得られたものと思う。複雑な配位に対しても、基本的なFourier係数はかなり限定されたもので十分なことがわかり、配位の比較において見通しのよい理解を得ることができた。複素数表示によるFourier係数は、そのスペクトル構造を図示することによって、一目で配位の特性を見分けることも可能である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの3年間の研究により、ヘリカル閉じ込め全体に対するかなり見通しの良い理解が進んだので、その基礎の上に立ってLHD装置の磁場配位を改善する方向を探る。一昨年の研究成果として、すでに閉じ込め特性の一つの要素(高ベータ平衡配位におけるシャフラノフ・シフトの抑制)についての改善策が見つかっており、その方向をさらに進めることにより、より良い閉じ込め特性を実現する磁場配位を探求する。また最外殻形状に基づいて設計した磁場配位を実際の装置において実現するためには、磁場コイルの設計が必要となる。磁場コイルについても、一昨年の改善配位に対してはヘリカルコイル形状の変更による解決策が見つかっており、見通しはかなり明確なものとなっている。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度には、予定していた高速計算用サーバの仕様検討を行い、最終的には年度末に購入した。その支払いが平成26年4月にずれ込んだため、次年度使用額として計上された。 高速計算用サーバの購入が済んだため、その後の助成金使用計画としては、研究成果発表のための国際会議出張経費、国内の学会の出張経費、研究論文執筆のための経費と投稿料、さらに研究計画終了時の報告書の印刷経費として助成金を使用する。
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