研究計画の最終年度は、これまで検討を進めてきた、プラズマの圧力が高い平衡配位においてすぐれた閉じ込め特性を持つ新しい磁場配位を、実際の磁場閉じ込め実験装置としてどのように実現するかという課題に取り組んだ.高温プラズマの磁場閉じ込め装置の設計では、磁場コイルの形状から生成される磁場分布を計算し、そこでのプラズマの閉じ込め特性を計算するという古典的な方法に対して、磁場の三次元分布を数学モデルによって表現し、最後にその三次元磁場分布を与える磁場コイル形状を計算する、という方法論がある.核融合科学研究所の大型ヘリカル装置(LHD)は、前者の方法によって設計された装置であるが、ここ20年程のヘリカル系磁場閉じ込め研究では、後者の方法論による装置設計が主流となっている.本研究課題では、新しい磁場配位の設計においては、最外殻形状のフーリエモードを基礎とした設計法を用いており、磁場コイルの設計は後者の方法論によることになる. プラズマ閉じ込め特性を最適化した結果の磁場配位を与えて、それを実現する磁場コイルを設計する際には、何種類かの異なる形状を持った変形したトロイダル・コイルを並べた構造が多く用いられている.ヘリカル装置設計においてはモジュラー・コイル型装置と呼ばれるものである.本研究課題では、まずこの一般的な磁場コイルの設計法を用いて、新しい磁場配位を実現するためのモジュラー・コイルを設計した.一方、本研究課題で見いだした新しい磁場配位は、LHDの磁場配位を基にして改良したものであるので、LHD装置と同様の連続ヘリカル・コイル形状の磁場コイル設計の可能性も考えられる.ヘリカル・コイル形状に与える新しい設計パラメータとして、コイルの巻き枠形状を円形から楕円形とすることにより、本研究課題で得られた優れた閉じ込め特性を持つ磁場配位を、実際の実験装置として実現するための磁場コイル設計に成功した.
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