研究課題/領域番号 |
23561006
|
研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
伊神 弘恵 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (10390634)
|
キーワード | 高密度プラズマ加熱 / モード変換の物理 |
研究概要 |
本研究課題は、プラズマの加熱に用いられる電子サイクロトロン波(EC波)の遮断密度を越える高密度プラズマから放射される、電子バーンシュタイン波(EBW)由来の放射電磁波をEC波加熱用に設置された入射アンテナとミリ波伝送系を用いて計測し、逆過程であるEBWによる電子サイクロトロン加熱のための最適入射条件(ミリ波入射方向、偏波)を探査することが目的である。また、最適入射(受信)条件を予測するための数値計算コードの整備も本研究課題で実施すべき重要な項目である。 電磁波とEBWのモード変換が期待できる電磁波の入射角度の範囲は、適用周波数が上がり、またプラズマのサイズが大きくなると狭まる傾向にある。このため、本研究課題において他の大型装置に先駆けて強磁場装置での高密度運転におけるEBW加熱の有効性を確認できれば、今後の核融合装置への適用に関して重要な判断材料となる。 本研究課題では、第二高調波周波数帯の計測を目的として申請したが、これは電磁波からEBWへのモード変換がおきる高域混成共鳴層がプラズマの内奥部に位置するため、モード変換過程により励起されたEBWがプラズマコア部に位置する第二高調波共鳴層近傍で吸収され高密度プラズマの中心部加熱が期待できるという理由からであった。しかし、大型ヘリカル装置(LHD)におけるEBW加熱実験において、基本波入射によってもその遮断密度を越えるプラズマの加熱の効果が観測された。本研究課題にて整備を進めている数値計算コードを用い、計算で用いる密度分布を適切に選択することで、高いEBW-電磁波変換効率が予測される入射方向との実験で加熱効果が確認された入射方向が良い一致を示すことが確認できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の申請時に、計測に使用する予定としていた大型ヘリカル装置(LHD)水平ポートアンテナに接続されている3.5インチコルゲート導波管を使用したミリ波伝送系に、2012年度より加熱用154GHzジャイロトロンが導入された。このため同系統を用いての放射波計測が困難となったので、LHD下部ポートアンテナに接続されている1.25インチコルゲート導波管を使用したミリ波伝送系を使用することに計画を変更した。この系統は長パルス運転実験の際には加熱用に84GHzのミリ波を伝送するため、導波路切り替え器を用いて計測用導波路と加熱用導波路を途中で選択できるようにし、また高電力伝送のために真空化されているため、計測用導波路の終端に既存の加熱用真空窓を配し、その先にラジオメータを設置した。 しかし遮断密度以下のプラズマの電子サイクロトロン放射(ECE)をテスト計測した際に77GHz, および154GHzジャイロトロン運転時に発生する寄生振動が混入すること、また受信強度が非常に弱いことが判明した。比較のため入射方向がトロイダル方向には大きく変化させられず、EBW放射計測には用いることはできないアンテナを擁する3.5インチコルゲート導波管を使用した伝送路でECE計測をおこなったところ、十分な信号強度を得ることができた。 LHD実験期間終了後、1.25インチ伝送系の第二高調波周波数帯のミリ波の伝送特性試験を行った結果、現在の84GHz伝送用に最適化された伝送路コンポーネントのセットアップ状態では第二高調波周波数帯の伝送効率は非常に低いことが判明した。 このように申請時には予定されていなかった、使用予定の伝送路への加熱用ジャイロトロン導入があったため、別系統の伝送路に計測システムを移設したが、こちらも加熱のための使用と共存する状態が計測を困難にしている。
|
今後の研究の推進方策 |
まず、1.25インチ使用の伝送路コンポーネントを組み替えることで、第二高調波帯の伝送特性が改善するかを調べる。導波管の伝送特性、偏波器の影響、現在使用している真空窓の周波数特性、を個別に明らかにする。改善可能と判断した場合には、コンポーネント組み替えしてこの伝送路の使用を継続し、また寄生発振対策としてはジャイロトロンから離れた場所にラジオメータを設置することで寄生発振の影響を減ずることができることを確認しているので、それを行う。 1.25インチ伝送系では十分な信号強度が得られないと判断した場合には、既に加熱の効果が実験において確認されている、基本波共鳴周波数帯のEBW由来の放射電磁波の計測を行うように研究方針を変更する。別途予算にて購入したミキサを使用し、IFアンプ以下は本研究課題にて導入したシステムを使用する。 数値計算による予測と実験結果とが精度良く一致させることを目的として、数値計算において使用する温度密度分布及び平衡磁気面分布の選択を実験に合わせて最適化できるように計算コードを整備を進める。特に、最外殻磁気面内外の周辺領域の密度分布が波動伝播方向に大きな影響を与えている可能性がこれまでの実験結果より示唆されているので、温度密度分布外挿ルーチンを導入し、様々な周辺密度分布を選択した際の波動の軌道への影響を精査する。改善された数値計算コードを用いて、第二高調波加熱のための最適入射条件を特に周辺密度分布の影響を考慮しながら探査する。研究方針の変更により基本共鳴周波数帯計測を行うことになったとしても数値計算による予測の妥当性については検証が可能である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
マイクロ波部品一式 10万円:(ラジオメータ配置替えの際に必要な部品を購入する) 国内旅費:12万円(プラズマ・核融合学会年会・東京工業大学大岡山キャンパス)(日本物理学会秋季大会・徳島大学) 外国旅費:28万円 20th topical conference on radio frequency power in plasmas 6/25-2 Sorrent, Italy
|