研究課題/領域番号 |
23561008
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
河村 繕範 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 核融合研究開発部門, 研究主幹 (10354614)
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キーワード | 遷移金属型モルデナイト |
研究概要 |
本研究は、核融合炉トリチウム増殖ブランケットで生成するトリチウムを分離回収するシステムのうち、水蒸気成分を回収する吸着塔について、吸着材に触媒機能を持たせることで水蒸気成分の回収とトリチウム化学形の移行を同時に行うことを目的とし、親水性交換触媒の検討を行うものである。これまでガス―水両成分の捕捉を目的とした親水性交換触媒の適用は検討されているが、本研究では水分保持量が比較的少ないNaモルデナイト(Na-MOR)を触媒担体として選択した。3年計画の2年目である平成24年度は、前年度の結果を勘案して触媒担体を選出し(Na-、Li-、Mg-、K-MOR)、貴金属を担持させない状態での水素―水蒸気間の同位体交換反応の観察を行う一方で、遷移金属でカチオン交換したモルデナイト(Mn-、Fe-、Ni-、Cu-、Pd-、Ag-MOR)を作成し、物性データの取得を進めた。遷移金属型モルデナイトのBET比表面積はNa-MORと大差なく、細孔径は小さくなるものの各々ほぼ同じであることがわかった。交換反応の観察では、Na-MOR及びLi-MORについて、重水素1.0%、水蒸気2.0~5.0%のガスを供給し、試料充填層出口でのDの減少とHの発生を観察したが、250℃においても顕著な変化は認められず、アルカリ金属型モルデナイトは殆ど触媒反応に寄与しないことを確認した。そこで、遷移金属交換型モルデナイトから触媒効果の期待できるPd-MORを用い、25℃及び50℃で同様の試験を実施したところ、顕著なDの減少とHの発生があり、同位体交換反応の発生を確認するとともに、速度の定量に見通しを得た。遅れているトリチウム実験装置の整備が済み次第、トリチウム実験を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度実施計画は、1)交換反応実験試料の選定と作成、2)同位体交換反応実験の実施、3)交換反応速度の定量、4)カチオン種が交換反応に及ぼす影響についての考察である。1)については目標を達成しており、前年度作成試料から水分吸着量、細孔径、化学吸着水に着目してMg-、K-、Li-、Na-MORを選出した。遷移金属型モルデナイトはMn-、Fe-、Ni-、Cu-、Pd-、Ag-MORを作成し細孔径等を調べた。2)交換反応実験は、使用予定の実験装置を別の研究活動に用いる必要が生じたために遅れが生じている。回復策としてコールドの実験装置を整備してスクリーニングを実施した。1)で選定した試料に、重水素(D2)、水蒸気(H2O)混合ガスを供給して試料充填層出口の水素同位体濃度を質量分析計で測定したが、試料温度250℃でもHの発生がなく、アルカリ金属型モルデナイトは触媒活性がない。遷移金属型モルデナイトのうち、Pd-MORについては、温度25℃、50℃でD2の減少とH2の発生を確認し、同位体交換反応が生じることがわかった。3)交換反応速度の定量は、実験の遅れにより十分なデータが得られておらず未実施であるが、転換率の空間時間依存性から反応速度定量の見通しを得た。4)カチオンの効果に関する考察も、速度の定量が未実施のため十分ではない。交換反応の進行には表面水酸基の生成が必要で、水酸基の多いLi-MORに触媒活性がないことから、水の乖離吸着速度へのLiの寄与が小さいか、別途気相水素との交換を促す作用が必要で、Pdにはその機能が備わっていると考えられる。トリチウム実験の遅れが全体の遅れにつながっているが、装置整備は次年度までには完了見込みであり、遅れを回復し当初の計画を完遂できる見通しは得られた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の遅れを回復するため、本研究課題に対するエフォートを引き上げる。コールド実験は水蒸気組成が測定できないため、当初の計画通りスクリーニングテストもトリチウム実験を行う。遷移金属型モルデナイトは周期律表上でPt、Pdと同族のNi及びPdの隣に位置するAgにしぼる。また、担体の性質が反応に与える影響を観察するため、選出済みのアルカリ金属型モルデナイトにPtを担持した試料を調整し、交換反応データを取得する。交換反応速度の定量は未調査のパラメータが多い非定常解析ではなく、定常状態解析により定量することで工程の短縮を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に19万円を繰越す。 実験を進める上で消耗品の購入は避けられないが、備品の購入はない。国際学会及び国内学会への参加を各々1件予定しているが、出張の有無は計画の進捗状況を勘案して決定する。計画の最終年度であり、まとめを意識してすすめる。
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