研究概要 |
本研究は、核融合炉固体増殖ブランケットで生成されたトリチウムを回収するシステムのうち、水蒸気成分を回収する乾燥塔に触媒機能をもたせることで、回収効率の向上につなげることを目的とし、親水性交換触媒の適用を検討するものである。本研究では水分保持量が比較的少ないモルデナイト型ゼオライトを担体としてカチオン交換を行い試料を調整した。1族及び2族のイオンで交換したモルデナイト自体は交換活性をほとんど示さないこと、パラジウムで交換したモルデナイトが交換反応活性を示すことが判明したことを受け、3年計画の最終年度である平成25年度は、パラジウム交換型モルデナイトを中心にトリチウムを用いた交換反応速度の定量を進めた。実験は、一定温度(30―80℃)に保持した試料充填層に、トリチウム水蒸気と水素を含むヘリウムガスを導入し、流量を変数として定常状態での充填層出口のガス組成を観察するもので、総括反応を仮定してデータの解析を行い、反応速度の比較の指標として総括反応速度定数を得た。遷移金属交換カチオンとしてはPd以外にMn, Fe, Ni, Cu, Agについて調べたが、顕著な交換反応活性を示したのはPdのみであった。また、これまでに調整した各種カチオン交換型モルデナイトを担体として白金を担持させトリチウム交換反応実験を実施したところ、Pd交換型モルデナイト単独よりも更に交換反応活性が高く、現状、水素同位体交換反応触媒としては貴金属を担持せざるを得ないとの結論に至った。一方で、担体としたモルデナイトの交換カチオンの違いによって、白金を担持させた時の反応速度に差異が生じることが判明した。その傾向は、担体の表面積、細孔径分布等とは直接関係しているように見えないことから、次の段階の研究としてこの傾向を明らかとすべく新たな研究課題として応募することとした。
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