研究課題/領域番号 |
23561011
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
沈 秀中 京都大学, 原子炉実験所, 助教 (20362410)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ミニチャネル内気液二相流 / 気泡流の画像処理計測法 / 界面積濃度 / 気泡合一と分裂のモデル化 / 流体工学 / ボイド率 |
研究概要 |
従来用いられてきた流動様式線図や実験相関式に依存する界面輸送項モデル化手法に代わる機構論的な界面積濃度輸送方程式に基づく解析手法を構築する目的を実現するために、平成23年度は初年度として以下の実験的研究と理論開発を実施した。(1)流路間隙と流路幅が流動特性に及ぼす影響及び流れの発達過程が流動特性に及ぼす影響を検証可能なミニチャネル内気液二相流の試験ループを京都大学に新たに設置した。(2)空気―水気液二相流実験用試験部(垂直矩形管,間隙1.0mm×幅40mm)及び幅40mm矩形管用気液混合器を新規作成した。(3)差圧計と気液二相の流量計を含む計測系を構築した。(4)ミニチャネル内気液二相流において、高速度カメラを併用した画像処理局所計測法の計測理論を新たに確立し、この計測理論に基づいた画像処理ソフトの整備とこの画像処理計測方法に対した検証を完了した。(5)この新しい計測理論を用いて気泡群を分類して各気泡群のボイド率、界面積濃度、気相速度、気泡径と気泡頻度の流れ方向局所計測と圧力損失計測を実施し、狭間隙矩形管の流れの発達過程が流動特性に及ぼす影響を検証可能な間隙1.0mm×幅40mm垂直矩形管のデータベースを構築した。(6)既存垂直矩形管内びボイド率、界面積濃度、圧力損失等のデータと既存の矩形管内二相流モデルを分析し、本年度研究で取得したデータと比較した。それらの実験データに基き、その一部モデルを改良した。(7)気液二相流の相間相互作用と界面積濃度輸送機構の変化を明らかにするために、商用数値解析ソフトANSYS FLUENTを利用して、狭間隙矩形管内の流動特性を解析した。その解析と本年度の実験データにより、狭間隙矩形管の流れの発達状況が管内伝熱と流動に大きく影響することが分かった。(8)本年度研究の研究成果が国内学術講演会と国際学術ジャーナルに投稿発表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の研究期間は、平成23年度から平成25年度まで3年となる。当初の研究目的を達成できる計画としては、平成23年度に以下のことが予定された。(1)ミニチャネル内気液二相流の試験ループを京都大学に新たに設置すること。(2)空気―水気液二相流実験用試験部(垂直矩形管,間隙1.0mm×幅40mm)及び幅40mm矩形管用気液混合器を新規作成すること。(3)差圧計と気液二相の流量計を含む計測系を構築すること。(4)ミニチャネル内気液二相流において、高速度カメラを併用した画像処理局所計測法の計測理論を新たに確立し、この計測理論に基づいた画像処理ソフトの整備とこの画像処理計測方法に対した検証を完了すること。(5)この新しい計測理論を用いて気泡群を分類して各気泡群のボイド率、界面積濃度、気相速度、気泡径と気泡頻度の流れ方向局所計測と圧力損失計測を実施し、狭間隙矩形管の流れの発達過程が流動特性に及ぼす影響を検証可能な間隙1.0mm×幅40mm垂直矩形管のデータベースを構築すること。(6)本年度研究の研究成果が国内学術講演会と国際学術ジャーナルに投稿発表すること。ミニチャンネル内気液二相流の界面積濃度輸送モデルを開発するために、当初の計画以上に以下の進展も実現した。(1)既存垂直矩形管内びボイド率、界面積濃度、圧力損失等のデータと既存の矩形管内二相流モデルを分析し、本年度研究で取得したデータと比較した。それらの実験データに基き、その一部モデルを改良した。(2)気液二相流の相間相互作用と界面積濃度輸送機構の変化を明らかにするために、商用数値解析ソフトANSYS FLUENTを利用して、狭間隙矩形管内の流動特性を解析した。その解析と本年度の実験データにより、狭間隙矩形管の流れの発達状況が管内伝熱と流動に大きく影響することが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
ミニチャネルの機構論的な界面積濃度輸送方程式に基づく解析手法を構築するために、平成24、25年度は以下のように推進しようと考えている。(1)間隙0.5mm×幅40mm×高さ1m、間隙1.5mm×幅40mm×高さ1m、間隙1.0mm×幅10mm×高さ1m、間隙1.0mm×幅100mm×高さ1mの4体矩形流路試験部と幅10mmと幅100mmの2体矩形管用気液混合器の新規製作。(2)上記4体の矩形流路試験部と関連する気液混合器をそれぞれに用いた気液二相流の流動実験の実施により、ボイド率と界面積濃度などの気泡特性値データの取得。(3)取得したデータが平成23年度のデータとの比較及び分析による狭間隙矩形管内気液二相流の流動特性と界面積濃度輸送機構の総合的・系統的な検討及び狭間隙矩形管の流路間隙と流路幅が流動特性に及ぼす影響のモデル化。(4)二群界面積濃度輸送方程式の導出、気泡合一と分裂の基本メカニズムに基づくあらゆる群内気泡と群間気泡の合一と分裂パターンによる界面積濃度生成と消滅のモデル化及び界面積濃度輸送方程式の評価の実施。(5)既存の圧力損失相関式の適用性検討又は更なる改良。平成23年度の実施状況により、気液二相流の相間相互作用と界面積濃度輸送機構の解明に対して、商用数値解析ソフトANSYS FLUENTに界面積濃度輸送モデルを導入して数値計算の実施と実験データとの比較をすることが有効である。この数値解析方法により、本研究で新たに開発した界面積濃度輸送方程式を評価できる道が開けた。今後この数値解析の研究方法は、実験研究の補助として継続することを予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度研究では、京都大学原子炉実験所の空気―水気液二相流実験ループを用いて実験を行うが、狭間隙矩形流路(間隙0.5mm×幅40mm×長さ1mと間隙1.5mm×幅40mm×長さ1m)試験部二体を新たに製作する必要がある。狭間隙矩形流路の隙間が小さく、加工の高精度が要求さているので、特別注文する必要がある。高速度カメラを併用した画像処理計測法を用いて狭間隙矩形管内の気液二相流の局所計測を行うために、十分な照明強度を有する照明装置を更新する必要がある。実験の実施を伴う設備の維持と修理が必要となる。またデータ処理に関連する計算環境の整備と更新が必要である。平成24年度研究を遂行するために、国内外研究調査及び海外共同研究者との打ち合わせを行い、京都大学原子炉実験所において実験を実施する。さらに得られた結果は国内および国外学術会議と学術誌において研究成果公表を行い、当該分野の研究者と討論を行う。それらの研究調査、打ち合わせ及び学術会議参加に関連する国内・国外旅費が必要である。さらに、本研究の実験補助に対して、謝金が必要となる。
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