研究課題
従来用いられてきた流動様式線図や実験相関式に依存する界面輸送項モデル化手法に代わる機構論的な界面積濃度輸送方程式に基づく解析手法を構築する目的を実現するために、平成24年度はミニチャネル内気液二相流に対して、以下の実験的研究と理論開発を実施した。(1)流路摩擦損失の影響を考慮して高流速の気液二相流に対応できる差圧計測計の改造と検証を行った。(2)空気ー水気液二相流実験用試験部二体(垂直矩形管:間隙0.5mm×幅40mmと間隙1.5mm×幅40mm)を新規に作成した。(3)既存の気液二相流の一群界面積濃度輸送方程式と関連モデルの調査と評価を行い、これらのモデルがミニチャネル内気液二相流への応用において存在する問題を分析した。(4)本研究で取得したミニチャネル内気液二相流の実験データに基づいて、気泡の平たくする特性を利用した狭隘矩形管内気液二相流の一群界面積濃度輸送方程式を構築・検証した。(5)狭隘矩形管内気液二相流用乱流誘起のランダム衝突による気泡合体のモデルを提案・検証した。(6)狭隘矩形管内気液二相流用乱流渦衝突による気泡分裂のモデルを提案・検証した。(7)研究炉事故時の炉心ミニチャネル流路(狭隘矩形流路)内で発生する沸騰気液二相の伝熱と流動の界面輸送モデルを開発・検証するため、京都大学原子炉実験所の研究炉を利用して自然循環時の伝熱と流動測定実験を実施し、その炉心内部の狭間隙矩形管内の伝熱特性と流動特性を分析した。(8)ミニチャネル内気液二相流に対して、フォーセンサープローブなど新しい計測方法の導入を検討している。(9)本年度の研究成果が国内と国外の学術講演会と国際学術ジャーナルに投稿・発表している。
2: おおむね順調に進展している
本研究の研究期間は、平成23年度から平成25年度までの3年となる。当初の研究目的を達成できる計画としては、平成24年度に以下のことが予定された。(1)間隙0.5mm×幅40mm×長さ1mと間隙1.5mm×幅40mm×長さ1mの2体矩形流路試験部の新規製作。(2)上記2体の矩形流路試験部をそれぞれに用いた気液二相流の流動実験の実施とボイド率と界面積濃度などの気泡特性値データの取得。(3)取得したデータが平成23年度のデータとの比較及び分析による狭間隙矩形管内気液二相流の流動特性と界面積濃度輸送機構の総合的・系統的な検討及び狭間隙矩形管の流路間隙が流動特性に及ぼす影響のモデル化。(4)界面積濃度輸送方程式の導出、気泡合一と分裂の基本メカニズムに基づくあらゆる気泡の合一と分裂パターンによる界面積濃度生成と消滅のモデル化及び界面積濃度輸送方程式の評価の実施。ミニチャンネル内気液二相流の界面積濃度輸送モデルを開発するために、当初の計画はおおむね順調に進展している。(1)実験はおおむね計画の通りに進行している。(2)狭隘矩形管内気液二相流の界面積濃度輸送方程式の理論開発及び狭隘矩形管内気液二相流用乱流誘起のランダム衝突による気泡合体のモデルと乱流渦衝突による気泡分裂のモデルの構築もおおむね計画の通りに進行している。
ミニチャネルの機構論的な界面積濃度輸送方程式に基づく解析手法を構築するために、平成25年度は以下のように推進しようと考えている。(1)間隙1.0mm×幅10mm×長さ1mと間隙1.0mm×幅100mm×長さ1mの2体矩形流路試験部と幅10mmと幅100mmの2体矩形管用気液混合器の新規製作。(2)幅10mmと幅100mmのの矩形流路試験部と気液混合器をそれぞれに用いた気液二相流の流動実験の実施により、ボイド率と界面積濃度などの気泡特性値データの取得。(3)取得したデータが過去のデータとの比較及び分析による狭間隙矩形管内気液二相流の流動特性と界面積濃度輸送機構の総合的・系統的な検討及び狭間隙矩形管の流路幅が流動特性に及ぼす影響のモデル化。(4)幅10mmと幅100mmのの矩形流路の実験データにより、平成24年度に導いた界面積濃度生成と消滅のモデル及び界面積濃度輸送方程式の再評価と修正の実施。(5)既存の圧力損失相関式の適用性検討又は更なる改良。ミニチャネル内気液二相流に対して、光ファイバのプローブなど新しい計測方法が有効で、それらの導入検討も継続する必要がある。
平成25年度研究では、京都大学原子炉実験所の空気―水気液二相流実験ループを用いて実験を行うが、狭間隙矩形流路(間隙1.0mm×幅10mm×長さ1mと間隙1.0mm×幅100mm×長さ1m)試験部二体を新たに製作する必要がある。狭間隙矩形流路の隙間が小さく、加工の高精度が要求さているので、特別注文する必要がある。高速度カメラを併用した画像処理計測法を用いて狭間隙矩形管内の気液二相流の局所計測を行うために、十分な照明強度を有する照明装置の消耗品を購入する必要がある。実験の実施に伴う設備の維持、更新及び修理が必要となる。またデータ処理に関連する計算環境の整備と更新が必要である。平成25年度研究を遂行するために、国内外研究調査及び海外共同研究者との打ち合わせを行う必要がある。さらに得られた研究成果は国内および国外学術会議と学術誌において発表を行い、当分野の研究者と討論を行う予定がある。それらの研究調査、打ち合わせ及び学術会議参加に関連する国内・国外旅費が必要である。また、本研究の実験実施に対して、補助者が必要で、それに関連する謝金が生じると思う。
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