研究課題/領域番号 |
23561012
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
清水 喜久雄 大阪大学, ラジオアイソトープ総合センター, 准教授 (20162696)
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研究分担者 |
飯田 敏行 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60115988)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | PCR / バイオドシメトリ / DNA損傷 / 吸収線量 |
研究概要 |
出芽酵母S288cのURA3領域(804 bp)をPCR(polymerase chain reaction)によって増幅し精製した反応物をDNAサンプルとした。DNAサンプルの濃度は0.01ng/1反応とした。DNAサンプルに対し、千代田テクノル大洗研究所のガンマ線源を用い、ガンマ線(LET:0.2 KeV)を照射した。また、比較として、日本原子力研究開発機構イオン照射研究施設(TIARA)のAVFサイクロトロンを用いて加速した炭素イオン粒子(220 MeV,LET:107 keV/μm)、ならびに放射線医学総合研究所 HIMACの炭素イオン粒子(290 MeV, LET:50 keV/μm)を照射した。 吸収線量は0.05 Gy-1.0 Gyである。照射したサンプルDNAを鋳型とし、EcoTM Real-TimePCR System (illumina®)を用い、未損傷の鋳型DNAの量を評価した。ポリメラーゼ連鎖反応による増幅率は、サンプルの鋳型DNAの量に比例するため、未損傷の鋳型DNAの量、すなわちDNAの損傷量を評価することができると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、リアルタイムPCR(polymerase chain reaction)を用いた、DNA鎖切断収量を指標とした放射線吸収線量の評価法について検討した。リアルタイムPCRの解析結果は吸収線量の増加に伴って、DNA合成効率が低下していることを示した。DNA合成効率の低下は、鋳型DNAに生成した酸化的損傷や鎖切断に起因すると考えられる。また、吸収線量が等しいにもかかわらずLETが異なることで鋳型として機能しないDNA量が増加するこのもわかった。この結果は、LETの上昇に依存してDNA上に質的に異なる損傷が生じていることを意味するものである。今回の結果は、本手法がDNA鎖切断を指標として放射線による影響を評価できる可能性を示すものである。 23年度で得られた結果は次年度の研究につながるものであり、バイオドシメトリへの応用の可能性に一歩近づいたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
23年度で基本的な反応条件の構築が完了したので次年度は精度及び感度の向上を目指して次のような実験を行う。1. RCR反応の前に照射DNAにグリコシラーゼ等の酵素を働かせDNA損傷の拡大を図り感度の向上を図る。2. PCR反応の鋳型となるDNAの塩基配列の最適化を図り精度及び感度の上昇を目指す。3. 反応に用いるDNAポリメラーゼを変更し反応の向上を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究に必須なリアルタイムPCR装置が新製品の発売により比較的安価に導入できた。次年度はこの装置をフルに活用し多数の実験を予定している。リアルタイムPCR実験には高価な試薬が必要になるので予算の大部分を酵素及び試薬購入代(100万円程度)に充てる予定である。また鋳型DNAの合成に50万円、小型機器の購入に30万円、研究旅費に20万円程度の支出を予定している。
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