研究課題/領域番号 |
23561013
|
研究機関 | 大阪産業大学 |
研究代表者 |
硲 隆太 大阪産業大学, 人間環境学部, 准教授 (00379299)
|
研究分担者 |
佐久間 洋一 東京工業大学, 原子炉工学研究所, 研究員 (30133119)
|
キーワード | 実験核物理 / 素粒子実験 / 化学工学 / 同位体分離 / マイクロ・ナノデバイス |
研究概要 |
カルシウム同位体の化学濃縮法におけるこれまでで最大の分離係数1.014を得たクラウンエーテル(DC18C6)を用いた液液抽出法の最適条件(クラウンエーテル、有機溶媒、温度、撹拌時間)の探索を継続し行った。上記の内、クラウンエーテルは安価な18C6及びDC18C6を用い、撹拌時間を1時間、30、25、20、10分と変え、これまでの1時間撹拌でなく半分の30分で同様のカルシウム濃度結果を得、半分の反応時間に短縮可能なことを確認した。次にこの半分の反応時間で有機相(クラウンクロロホルム溶液)濃度をこれまでの0.07Mの5倍(0.35M)及び1/5倍(0.014M)(DC18C6では2倍(0.14M)及び1/2倍(0.035M)で液液抽出を行い、各々の液液抽出後のカルシウム濃度は、これまでの結果(0.07M, 撹拌時間1時間、30分)と変化がないことを確認した。本結果は最適な流路長・形状を求めるため、バッチ法での反応攪拌・静置時間の最適条件を決定し、マイクロチップ法へフィードバックをかける意味でも極めて重要な結果である。カルシウム濃度に加え、カルシウム同位体比の高感度測定に向け、液液抽出後のイオン交換樹脂カラムによる不純物除去・乾固による前処理法の確立も併せて行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
異動により所属研究機関が変わり、これまで実験作業を担ってきた有機化学・化学工学にスキルのあるマンパワー(旧所属機関の大学院生)が不在となり、クロロホルム等、有機溶媒の毒劇物を使用し、環境からのカルシウム混入等、高精度なノウハウも要求され、未経験の文系学部生に本実験作業は不可能で、派遣企業を通したスキルのある実験補助員を新たに雇用し、昨年度得られた結果の再現実験を行うことから始め、作業内容の再確認を行う必要が生じたため。併せて、旧所属機関での実験環境を再現するため、マイナスの環境(異動後、定年退官教員から引き継いだ実験室は廃棄機器の処分も手付かずで足の踏み場も無い状態で、クリーンな環境のゼロにするだけで半年以上、要した。)から廃棄機器を処分し、クリーンルーム・ドラフト等、整備し、機器の移設等、環境・インフラ整備に非常な努力を要したため。
|
今後の研究の推進方策 |
液液抽出法の最適条件(クラウンエーテル、有機溶媒、温度、撹拌時間)の他のパラメータの決定をカルシウム濃度のみでなく同位体比でも確認する。乳化マイクロチップによるテスト実験により、液液抽出後の分離過程である静置時間の短縮(バッチ法で現在は1時間)も今後の課題であることが判明し、水相・有機相の撹拌後の粒径の確認、併せてエマルジョン形成用マイクロチップでのエマルジョン液滴との粒径の比較を行う。分離過程の高速化(分離時間の短縮化)には、遠心分離、超音波洗浄、磁場MRI、電場等、種々の方法で確認する。また有機溶媒として毒劇物で取扱い難なクロロホルムの代替としてジクロロメタンや、さらに反応時間の高速化を目指した触媒の検討も行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
初年度に設備備品として必要な機器はほぼ既に導入を行い、次年度は継続的に必要な消耗品として有機相(クラウン-クロロホルム等)と水相(塩化カルシウム水溶液)の2液及び、濃度・同位体比測定時の質量分析器使用に伴うアルゴン(窒素)&アンモニアガス(同位体交換反応時の水素ガス)及び実験補助員への人件費(謝金)、併せて研究分担者及び共同研究先(東工大・名大・広大・京大炉)との調査・実験・研究打ち合わせ旅費として研究費を使用する。またTIMSによる高感度同位体比測定に関して、京都大学原子炉実験所と共同で実施し、前処理法は硝酸・イオン交換樹脂法により確立し、NISTやIRMMより、同位体比既知のカルシウム標準物質(消耗品)を用い最適なマトリックス及び測定条件の最適化を行い、高精度な同位体比測定法を確立する。
|