研究課題/領域番号 |
23561016
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
大澤 孝明 近畿大学, 理工学部, 教授 (10038028)
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キーワード | 遅発中性子収率 / 入射エネルギー依存性 / アクチニド核種 |
研究概要 |
本年度は、超ウラン核種のうちNp-237、Am-241の遅発中性子収率の入射エネルギー依存性を解析する上での問題点を明らかにし、精度向上の方策を検討した。 1.先行核の核分裂収率と遅発中性子放出確率データを用いて、遅発中性子収率を計算した。計算値は測定値と比べて過大になる傾向があるが、先行核の核分裂収率の陽子の奇偶効果を考慮すると一致は改善されることが分かった。 2.異なった入射エネルギーに対して計算を実行した結果は、エネルギーが高くなるほど遅発中性子収率は減少する傾向を示した。これは、エネルギーと共に核分裂モードが変化するため、該当する領域にある先行核の収率が変化するためである。 3.核分裂生成物の荷電分布の最確電荷数Zpにより収率が大きく変化し、かつ、Zpは波動状の揺らぎ(undulation)を示すことから、この効果を取り込むことが重要であることが分かった。 4.関連した研究として、核分裂片のクーロン加速途中における中性子放出をモンテカルロ法で検討し、この効果を考慮すると即発中性子スペクトルの低エネルギー成分が増強されることを明らかにし、その結果を論文で公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、昨年度に引き続き、超ウラン核種のうちNp-237、Am-241の遅発中性子収率の入射エネルギー依存性を解析した。計算精度を向上する上で、陽子数の奇遇効果と最確電荷の揺らぎ(undulation)を考慮することが重要であることが明らかになった。遅発中性子収率のエネルギー依存性を解析するためには、奇偶効果の核種およびエネルギー依存性、ならびに、undulationが親核種によってどのように変化するかを知る必要がある。精度向上のためのポイントが徐々に明確になってきたので、おおむね順調に進展していると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は次の研究を行う。(1)他のアクチニド核種について同様な方法で評価計算を実施する。核種により、主要な先行核が変化すると予想されるので、その相違に着目する。(2)主要な先行核が変化すると、当然ながら遅発中性子生成の時間変化も異なるので、その変化も興味深い点になる。(3)上述のZpの奇偶効果およびundulation現象を適切にモデル化する。なお、2012年度は、研究代表者の健康上の理由で調査出張ができなかったこともあり未使用額(48,165円)が発生した。
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次年度の研究費の使用計画 |
現在はワークステーション(WS)の下にパソコン(PC)を配置しているが、WSどうしの接続はしていない。今年度は研究室にある3台のWSの上に、統括管理用のサーバーを導入する計画である。これにより、遅発・即発中性子各データの計算と、臨界集合体を用いた加速器駆動炉の炉物理解析が一つのシステムの下で行えるようになると期待している。このほか、周辺機器の追加整備、ソフトウェア、研究成果の発表、他研究機関の研究者との討議も行いたい。2013年度は最終年度になるので、前年度の未使用額も含めて支出する予定である。
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