研究概要 |
加速器駆動未臨界炉システム(ADS)は、通常パルスモードで運転され、その時間依存性を解析するために遅発中性子データが必要とされる。ADSターゲット系における平均核分裂エネルギーは通常の原子炉に比べて高いため、遅発中性子データは従来の原子炉用データとは大きく異なる。本研究では総和計算法を用いて、高いエネルギー領域におけるアクチニド核種の遅発中性子収率を評価することを試みた。本研究の成果の概要は以下の通りである。(1)遅発中性子収率νdは、先行核の核分裂収率Yiと各先行核の遅発中性子放出確率Pn,iの積の和で決定される。この両者に誤差が伴うため、まず一方を固定した上で他方を変化させて系統的変化を見た。(2) 森山・大西(MO)モデルで遅発中性子収率を計算した場合、核種による遅発中性子収率の変化は、(Zc-Ac)(Ac/Zc)[Zc、Acは核分裂する親核の電荷および質量数]に対してほぼ指数関数型の変化を示し、この傾向は採用したPn,iデータセットによらない。また実験データと比較すると、Tuttleの系統式と同等の傾向を示す。(3)核分裂収率をMOモデル計算値に固定し、Pn,iとしてWahlおよび橘ら(TUYY)のデータセットを用いて計算した結果を比較すると、全般にWahlが高目、TUYYが低目の値を与え、その差はほぼ数倍に及ぶ。この差が、現時点におけるPn,iデータの不確かさを示すものである。(4)遅発中性子先行核は約270核種あるが、遅発中性子収率νdの値の約90%は主要20先行核で決定される。したがってνdを正確に評価するためにはこれら主要20先行核のデータの精度の向上が重要である。 (5)高い入射エネルギーにおけるνdは一般に減少する傾向があるが、その減少の程度は、即発中性子数、核分裂生成物中の陽子数の偶奇性により変化する。
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