研究課題/領域番号 |
23561020
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
石井 保行 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 放射線高度利用施設部, 研究副主幹 (00343905)
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キーワード | 加速レンズ / ガスイオンナノビーム形成装置 |
研究概要 |
H23年度に開発した電極間間隔が15mmの単一ギャップ加速レンズ(以下、単一ギャップ第3加速レンズ)について、レンズの側面に2気圧のSF6(絶縁ガス)を封入して電圧印加試験を行った結果、200kVまで印加でき、一般的な加速管の13倍、既存の従来型複数電極の加速レンズ(以下、複数電極第3加速レンズ)の4倍に相当する高電圧勾配13.3kV/mmを達成した。これにより、単一ギャップ第3加速レンズを用いた3段加速レンズ系全体の縮小率が目標の1000を達成できる見通しが得られた。 また、既存のプラズマ型イオン源と2段加速レンズに複数電極第3加速レンズ又は単一ギャップ第3加速レンズを組み合わせられる300keVガスイオンマイクロビーム形成装置(以下、マイクロビーム形成装置)を構築した。更に、鋭いナイフエッジをイオンビームに対して垂直に移動し、この下流に置いたファラデーカップで測定したビーム電流の変化から10nmの分解能でビーム径を測定する装置を開発した。複数電極第3加速レンズを用いたマイクロビーム形成装置で2段加速レンズに20kV、複数電極第3加速レンズに143kVを印加することで水素イオンビームを加速・集束し、ビーム径測定装置により評価した結果、直径は19μmであり、マイクロビーム形成装置の各部分が正常に動作することを確認した。これにより、単一ギャップ第3加速レンズを用いた場合にはさらに高縮小率が見込めるため、より小さいビームの形成が可能であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H24年度の計画では、単一ギャップ第3加速レンズの電圧印加試験の実施、既存の2段加速レンズ系と組み合わせたマイクロビーム形成装置の構築、当装置によるマイクロビームの形成実験の実施を目標とした。電圧印加実験では高電位勾配が得られることを確認し、マイクロビーム形成装置の構築では、2段加速レンズ系に単一ギャップ第3加速レンズ又は複数電極第3加速レンズを組み合わせられるようにして、ほぼ計画通りに進捗した。マイクロビーム形成については、複数電極第3加速レンズを用いて行った動作実験の後、イオン源に電力を供給する発電機が故障し、修理に時間を要したため以降の実験ができなかったが、単一ギャップ第3加速レンズを用いることで10μm径以下のビーム形成が可能な見通しを得た。
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今後の研究の推進方策 |
単一ギャップ第3加速レンズの使用により、マイクロメートル径以下のイオンビームの形成を目指す。また、複数電極第3加速レンズはレンズに入射するイオンビームの発散角を制御する絞り電極のうち、比較的開口径の大きなものを使用でき、集束点でビーム電流を得やすい利点があるため、当所の予定に加えてこのレンズを用いたビーム径の縮小化の実験を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
イオンマイクロ・ナノビームの形成に関する実験を遂行するための消耗品等に使用するとともに、国内外での成果発表に使用する。
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