研究課題/領域番号 |
23561021
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
涌井 隆 独立行政法人日本原子力研究開発機構, J-PARCセンター, 研究員 (50377214)
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研究分担者 |
二川 正敏 独立行政法人日本原子力研究開発機構, J-PARCセンター, 研究主席 (90354802)
勅使河原 誠 独立行政法人日本原子力研究開発機構, J-PARCセンター, 研究副主幹 (70354735)
直江 崇 独立行政法人日本原子力研究開発機構, J-PARCセンター, 研究員 (00469826)
佐藤 治道 独立行政法人産業技術総合研究所, 先進製造プロセス研究部門, 研究員 (90357145)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 液体金属 / 超音波 / 固液連成振動 / ガイド波 / 衝撃壊食 / 診断技術 |
研究概要 |
陽子ビーム入射を模擬したパルスレーザー入射により、励起された振動を基にした微小欠陥評価を検討するために、既存の超音波計測システムを用いて、損傷材に対する超音波計測の基礎的な知見を得るための試験を実施した。なお、構造体内壁面の損傷を評価することを想定して、損傷面に対して反対側からの超音波計測を実施した。その結果、損傷量が大きいほど、超音波入射後の超音波波形における減衰が大きく、高調波成分が顕著に現れることが分かった。そこで、この超音波波形の特徴を基に、ピッティング損傷を評価するための最適な計測条件について検討し、以下の結果を得た。1.損傷材に入射する超音波の周波数が高いほど、損傷に伴う減衰率の差異が明確である。また、損傷評価に及ぼす超音波の入射回数の影響はほとんどない。これは、低周波数入射であるレーザー振動励起法でも、減衰率に着目した評価が行えることを意味している。2.計測波形において、減衰前の振幅の70 %に減衰した時間帯域の振幅に着目することにより、損傷による差異が明確になった。また、ハイパスフィルタを使用して、入射周波数成分を除いた高調波成分からなる超音波波形に着目することにより、損傷による差異が明確になった。 以上の結果は、レーザー振動励起法における計測条件に対して極めて重要な知見であり、今後、超音波計測による損傷評価を進めるとともに、評価精度に及ぼす液体の影響について調査する。 また、固液連成振動挙動を確認するための試験において、配管を伝ぱするガイド波の群速度について数値解析による評価を実施した。配管中に液体を内包することにより、液体中に生じる定在波の影響により、中空配管の群速度挙動と異なることが分かった。また、既存試験体に対する最適な試験条件を検討した結果、使用周波数を約200kHzであることが分かり、今後、解析結果と試験結果の比較検討を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
パルスレーザーより励起した振動により、損傷を評価すること(レーザー振動励起法)を目指して、まず、超音波法による損傷評価試験を実施し、損傷を検知するための最適な計測条件を見出した。H23年度中に、この結果をレーザー振動励起法による計測手法に反映し、損傷評価の見通しを得ることを計画していたが、既存の検出器より、高周波領域までの振動計測が重要であることが明らかとなり、新たな検出器の調達が必要となった。しかし、H23年度末には新たな検出器を準備することにより、音響振動計測システムを組み上げ、損傷材に対する試験を開始した。 また、液体金属を内包した構造体の固液連成振動挙動を把握するための試験に関して、既存の試験体における振動挙動を数値解析により評価を行い、最適な試験条件を明らかにしした。この結果より、既存の試験体に対する試験に反映することが可能になったとともに、今後の追加試験における新たな試験体構造に反映させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
H23年度に明らかにした計測条件(振動加振条件や検出・信号処理条件)下で試験を行い、計測した音響振動から微小欠陥を定量的に評価することを目指すとともに、精度向上のためのより最適な計測条件の探求を行う。そして、その結果をレーザー振動励起法での計測条件決定に反映させ、損傷評価技術を確立する。さらに、液体金属を内包した構造体では、構造振動に液体金属の影響があると考え、液体金属が接した条件下で試験を行い、損傷評価に及ぼす液体金属の影響を確認し、実環境下での計測方法・条件について検討を始める。 固液連成振動挙動を把握する試験では、H23年度に行った解析結果を基に、試験体中に内包する媒体を変えながら、構造体の振動及び圧力波伝ぱ挙動に及ぼす媒体の影響を調査する。さらに、試験及び解析結果を基に、詳細に調査するための新たな試験体を製作し、固液連成振動を計測する試験を引続き実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
設備備品費としては、これまで及び今後の試験結果を踏まえ、微小な欠陥を検出するために、計測システムの高度化・高精度化のための探触子等を調達する。また、損傷評価試験において、既存計測システム内で液体金属に接触した状態を作るために、新たな容器等を製作する。さらに、固液連成振動挙動を詳細に調査するために、数値解析を基に形状を検討した新たな試験体を製作する。 消耗品費としては、損傷量の定量的な評価を行うために損傷量の異なる多数の損傷材を準備するともに、全試験結果を収録するためのデータ記録媒体を調達する。 旅費としては、研究分担者をはじめ、本研究に関わる研究者との打合せや、本研究の成果について、国内外での報告のために使用する。
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