研究課題/領域番号 |
23561021
|
研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
涌井 隆 独立行政法人日本原子力研究開発機構, J-PARCセンター, 研究員 (50377214)
|
研究分担者 |
二川 正敏 独立行政法人日本原子力研究開発機構, J-PARCセンター, 研究主席 (90354802)
勅使河原 誠 独立行政法人日本原子力研究開発機構, J-PARCセンター, 研究副主幹 (70354735)
直江 崇 独立行政法人日本原子力研究開発機構, J-PARCセンター, 研究員 (00469826)
佐藤 治道 独立行政法人産業技術総合研究所, 先進製造プロセス研究部門, 研究員 (90357145)
|
キーワード | 液体金属 / 超音波 / 固液連成振動 / ガイド波 / 衝撃壊食 / 診断技術 |
研究概要 |
非線形超音波法による損傷評価には、計測条件(入射超音波の周波数、波数及び計測波形における周波数成分)が強く依存することが考えられるため、損傷の評価手順を検討し、その手順に従い損傷評価を実施した。この損傷評価手順において、入射超音波の条件だけでなく、計測波形における特徴の抽出が重要である。即ち、損傷の影響は振動波形の減衰部に強く現れる。特に、未損傷領域における波形と比べると、損傷がある場合の波形は振動エネルギーが50%となる時間で顕著に異なる。また、計測波形の高次の高調波に着目することにより、評価における感度が増すことが分かった。 次に、上記の非線形超音波技術の知見も含めて、レーザー超音波による損傷の評価について検討を開始した。レーザー超音波計測システムでは、2つのレーザーを使用する。2つのレーザー照射位置の間隔は一定(5mm)とし、レーザー照射位置を変えながら、計測波形に対する損傷の影響について調べた。また、数値解析を行い、実験結果と比較した。その結果、計測波形において、負のピーク値と減衰係数に、損傷の影響が顕著に現れる。計測波形に対して、時間-周波数解析を行うことにより、損傷の影響がより顕著に現れ、損傷評価において時間-周波数解析が有効である。 さらに、レーザー超音波計測による損傷評価と平行して、液体金属を内包する構造体の損傷評価方法について検討を開始した。なお、本研究では、二重壁構造を有し、内壁の損傷に伴う容器の振動挙動の変化について、数値解析を用いて検討した、その結果、損傷の有無による振動波形の差異は非常に小さく、振動波形から、直接、損傷の有無を判断することは難しく、振動波形に対して時間-周波数解析を行うことにより、計測波形の比較よりも損傷の影響が現れることが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
パルスレーザーにより励起した振動により、損傷を評価すること(レーザー振動励起法)を目指して、非線形超音波法による損傷評価試験を実施し、損傷を検知するための最適な計測条件を見出した。H24年度中に、この結果をレーザー振動励起法による計測手法に反映し、損傷評価を進める計画であったが、既存の検出器より、高周波領域までの振動計測が重要であることが明らかになり、新たな検出器の調達が必要となった。そこで、関連研究機関が所有している検出器を用いて、予備試験を行い、損傷評価の見通しを得た。そして、H24年度末、関連研究機関からの同機種検出器の貸与手続きを行い、原子力機構に設置・調整を行い、H25年度からの試験開始の準備が整った。 また、液体金属を内包する構造体の一例として、核破砕中性子源水銀ターゲット容器に対して、数値解析を用いて、振動挙動を把握するとともに、内部構造部が損傷した場合について検討し、損傷を検知するためのデータ処理方法について明らかにした。超音波を利用した損傷評価技術を実機構造体に適用できる可能性を得た。
|
今後の研究の推進方策 |
H24年度までに明らかにしてきた非線形超音波計測条件(振動加振条件や検出・信号処理条件)下で追加試験を行い、計測した音響振動から微小欠陥を定量的に評価することを目指すと共に、精度向上のためのより最適な計測条件の探求を行う。 そして、その結果をレーザー振動励起法で計測条件に反映させ、損傷評価技術を確立する。 さらに、液体金属を内包した構造体の損傷評価を行うために、液体金属が接触した条件下で、音響振動計測を行い、損傷評価に及ぼす液体金属の影響について確認する。そして、実環境下での計測方法・条件について検討を進め、診断技術を確立する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
H24までに、本研究に必要な機器の整備が終了したため、設備費としての使用予定はない。消耗品費として、H24年度までに行ってきた試験に対する追加試験を行うため、試験片の購入を行う。また、データの整理等に必要なデータ記録媒体等を購入する。 旅費としては、研究分担者をはじめ、本研究に関わる研究者との打ち合わせや、本研究の成果について、国内外での報告のために使用する。
|