研究課題/領域番号 |
23561024
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
山下 真一郎 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 大洗研究開発センター 福島燃料材料試験部 材料試験課, 副主任研究員 (10421786)
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研究分担者 |
坂口 紀史 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70344489)
関尾 佳弘 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 大洗研究開発センター 福島燃料材料試験部 材料試験課, 研究員 (70565689)
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キーワード | ボイド欠乏帯 / 中性子照射 / 電子線照射 / オーステナイト鋼 |
研究概要 |
原子炉炉心材料における特異な照射誘起現象(ボイドスエリングや照射誘起偏析現象等)のより深い理解には、実効点欠陥濃度や点欠陥フラックスの定量的評価が不可欠であり、現状これらの定量的評価に立脚した材料因子(添加合金元素、析出物など)の的確な解析が十分になされていない。本研究で実施する、微細組織に及ぼす材料因子の効果に係る定量的解析は、ボイドスエリング開始時期(潜伏期間)の延伸や照射誘起偏析抑制等のための材料開発設計指針を得ることが期待され、非常に重要性の高い研究である。 本研究では、「照射点欠陥が結晶粒界等で優先的に拡散消滅することによりその濃度が減少し、結晶粒界にはボイド欠乏帯(無形成帯)が形成され、その幅は点欠陥の拡散係数、実効点欠陥濃度、損傷速度の関数で表される」ことを理論的及び実験的に示した研究分担者(北海道大学 坂口紀史)の過去の研究成果を応用し、材料因子が異なる様々な鋼種間に対してボイド欠乏帯幅の測定と実効空格子濃度ならびに空格子フラックスの導出を行い、鋼種間でそれらを比較した。 当該年度は316系ステンレス鋼におけるボイド欠乏帯幅及び実効空格子濃度等に及ぼす添加元素の効果を調査することを目的として、SUS316L及びSUS316Lベースの微量元素添加鋼(Zr, V, Ti)に対して電子線照射下で形成したそれぞれのボイド欠乏帯幅を実験的に測定し、実効空格子濃度及び空格子フラックスを評価した。これらの結果と昨年度取得した実機材PNC316の各データの比較から、鋼種毎に実効空格子濃度及び空格子フラックスが異なることが示され、特に各鋼種間の空格子フラックスの大小関係は、それらの耐ボイドスエリング特性の優劣関係と一致することが明らかとなった。このことから、本評価方法は、材料のボイドスエリング抑制に有効な添加元素を抽出するための効果的な方法として活用され得ることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度は、SUS316L 及びSUS316Lベースの微量元素添加鋼(Zr, V, Ti)の電子線照射材について、ボイド欠乏帯幅を実験的に測定し、実効点欠陥濃度への添加元素の効果を評価した。これにより、316系ステンレス鋼における実効空格子濃度等の評価についてはほぼ完了した。また、高Ni鋼における実効空格子濃度等に及ぼすNi濃度の効果を調査することを目的として、Fe-15Cr-25Niの電子線照射材及び中性子照射材に対して、上記と同様にボイド欠乏帯幅を測定し、実効点欠陥濃度等を評価した。その他の鋼種(Fe-15Cr-35Ni、Fe-15Cr-40Ni、Fe-15Cr-43Ni、PE16)の中性子照射材及び電子線照射材に対するボイド欠乏帯幅測定については、次年度の補足実験期間内で実施する。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、当該年度に未取得の実験データを取得することを目的として、次年度の補足実験期間内に各種高Ni鋼のボイド欠乏帯幅測定を行い、それぞれの実効空格子濃度や空格子フラックスを比較・評価することで、高Ni鋼におけるボイドスエリング抑制に及ぼすNi濃度及び析出物の効果を調査する。得られたデータをもとに、原子炉材料用の新規材料開発設計のための指針を提案する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度ならびに次年度で得られた研究成果を広く公開することを目的に、国際会議において口頭発表を行うための出張費として、研究費を使用する。また、北海道大学に設置された超高圧電子顕微鏡を用いた電子線照射試験や本研究の進行に係る打合せを実施するための出張費として使用する。そのほか、消耗品費として、本研究の各種作業に必要となる物品を購入するために使用する。
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