研究概要 |
本研究の目的は、イオンビームの生みだす欠陥が高品質な薄膜作製と原子オーダーの急峻な界面創製に有効であること示すことにある。従来、ベータ鉄シリサイド薄膜成長前に基板表面は化学エッチングや加熱などにより欠陥のない、清浄な面を出す手法がとられていた。我々は、イオンビーム処理という簡便で、制御性が非常に高い手法を用いることを特徴としている。研究開始初年度(H23年度)には、この基板処理に用いるイオンの照射エネルギー、照射量の最適化を図った。 ベータ鉄シリサイド薄膜は、シリコン(100)基板上にイオンビームスパッタ蒸着(IBSD)装置を用いて作製した。あらかじめシリコン表面を脱脂洗浄した後、ネオンイオンによるスパッタエッチング処理を行い、成膜前の表面に照射欠陥を導入した。スパッタ処理は照射エネルギー及び照射量を変化させて行った。また、蒸着は35 keV, アルゴンイオン(180 mA)を鉄ターゲットに照射して行った。 その結果、基板処理の最適化により急峻な界面を持つエピタキシャル薄膜が得られた。これらの値自体は成膜法、条件等により変化するものと思われるが、いずれの場合においてもベータ鉄シリサイドの成膜では、鉄, シリコン各原子の拡散、反応が必要な過程となる。すなわち本実験で観られたエピタキシャル薄膜、界面の急峻なイオン照射が結晶性及び表面構造を損なわない適度な欠陥層を作り、円滑な相互拡散を催したものと考えられる。 上記の知見により、交付申請書に記載したH23年度の研究目的である、イオンビームの加速エネルギー及び照射量を変化させ、急峻な界面を持つエピタキシャル薄膜作製の最適条件を見出した。
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次年度の研究費の使用計画 |
H24年度の研究を円滑に遂行させるためのものであり、計上された経費は必要最小限の妥当なものと考えている。1)透過型電子顕微鏡及びスパッタ成膜装置用のものを計上 (物品:700,000円)成膜用消耗品 (Co, Ba, Ni, Gaターゲット、高純度ガスAr, Ne, He)、電顕観察用消耗品 (電顕フイルム、印画紙、FIB加工用消耗品)2)連携研究者との打合せや成果発表のための国内外旅費を計上 (旅費:700,000円) 国内・国際会議 (春・秋応用物理学会、E-MRS, AVS)3)学会等の参加登録費等を計上 (その他:100,000円):学会参加登録費等
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