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2011 年度 実施状況報告書

ナノ欠陥を利用した機能性ヘテロ界面の創製

研究課題

研究課題/領域番号 23561025
研究機関(財)若狭湾エネルギー研究センター

研究代表者

笹瀬 雅人  (財)若狭湾エネルギー研究センター, 研究開発部, 主任研究員 (60359239)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワードナノ欠陥 / イオン照射 / 透過型電子顕微鏡
研究概要

本研究の目的は、イオンビームの生みだす欠陥が高品質な薄膜作製と原子オーダーの急峻な界面創製に有効であること示すことにある。従来、ベータ鉄シリサイド薄膜成長前に基板表面は化学エッチングや加熱などにより欠陥のない、清浄な面を出す手法がとられていた。我々は、イオンビーム処理という簡便で、制御性が非常に高い手法を用いることを特徴としている。研究開始初年度(H23年度)には、この基板処理に用いるイオンの照射エネルギー、照射量の最適化を図った。 ベータ鉄シリサイド薄膜は、シリコン(100)基板上にイオンビームスパッタ蒸着(IBSD)装置を用いて作製した。あらかじめシリコン表面を脱脂洗浄した後、ネオンイオンによるスパッタエッチング処理を行い、成膜前の表面に照射欠陥を導入した。スパッタ処理は照射エネルギー及び照射量を変化させて行った。また、蒸着は35 keV, アルゴンイオン(180 mA)を鉄ターゲットに照射して行った。 その結果、基板処理の最適化により急峻な界面を持つエピタキシャル薄膜が得られた。これらの値自体は成膜法、条件等により変化するものと思われるが、いずれの場合においてもベータ鉄シリサイドの成膜では、鉄, シリコン各原子の拡散、反応が必要な過程となる。すなわち本実験で観られたエピタキシャル薄膜、界面の急峻なイオン照射が結晶性及び表面構造を損なわない適度な欠陥層を作り、円滑な相互拡散を催したものと考えられる。 上記の知見により、交付申請書に記載したH23年度の研究目的である、イオンビームの加速エネルギー及び照射量を変化させ、急峻な界面を持つエピタキシャル薄膜作製の最適条件を見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的は、イオンビームの生みだす欠陥が高品質な薄膜作製と原子オーダーの急峻な界面創製に有効であること示すことにある。本研究期間内においてはこの目的に向かうために、1)~3)について検討を行う。1) イオンビームを用いた表面処理条件(柔らかい層作製)の最適条件の精密化。2) 欠陥種の同定及び急峻なヘテロ界面成長メカニズムの明確化。3) 急峻な界面を持つ高品質な薄膜の成長。これらの成果に基づき、種々の化合物薄膜作製へ応用へと展開する。 H23年度には、イオンビームを用いた表面処理条件(柔らかい層作製)の最適条件の精密化を図った。その結果、条件の最適化により急峻な界面を持つエピタキシャル薄膜が得られた。そして、イオン照射が結晶性及び表面構造を損なわない適度な欠陥層を作り、円滑な相互拡散を促したことが明確になった。すなわち、H23年度に得られた研究成果は上記1)の項目に相当し、本研究全体の約30 %を達成した。

今後の研究の推進方策

H23年度において、イオンビームの生みだす欠陥が高品質な薄膜作製と原子オーダーの急峻な界面創製に有効であること示した。H24年度は、薄膜創製において重要な役割をする欠陥種の同定及び、その欠陥がもたらすヘテロ界面の成長メカニズムについて、高分解能透過型電子顕微鏡により評価・検討を行う。1)高分解能透過型電子顕微鏡によるイオン照射した表面の欠陥種の同定イオンビームにより導入された欠陥は成膜前、基板内に残っていると考えられる。この欠陥種の同定を高分解能透過型電子顕微鏡により、明視野・暗視野法を用いて観察するとともに導入された欠陥種を明らかにする。さらにイオン照射条件(エネルギー及び照射量)を変化した際の欠陥構造の変化についても観察を行う。2) 急峻なヘテロ界面の成長メカニズムについての評価・検討欠陥の観察を1)で行った後、その欠陥が成膜中(加熱下)にどのような挙動をするのかについて、高分解能透過型電子顕微鏡により検討を行う。まず、シリコン基板表面にできた欠陥のサイズと、表面部分からの深さとその量、分布を観察する。さらに成膜中の欠陥の動きを、透過型電子顕微鏡の中で加熱ホルダーにより温度を変化させ、加熱時における変化を明らかにする。

次年度の研究費の使用計画

H24年度の研究を円滑に遂行させるためのものであり、計上された経費は必要最小限の妥当なものと考えている。1)透過型電子顕微鏡及びスパッタ成膜装置用のものを計上 (物品:700,000円)成膜用消耗品 (Co, Ba, Ni, Gaターゲット、高純度ガスAr, Ne, He)、電顕観察用消耗品 (電顕フイルム、印画紙、FIB加工用消耗品)2)連携研究者との打合せや成果発表のための国内外旅費を計上 (旅費:700,000円)  国内・国際会議 (春・秋応用物理学会、E-MRS, AVS)3)学会等の参加登録費等を計上 (その他:100,000円):学会参加登録費等

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Formation of atomically flat beta-FeSi2/Si(100) interface using ion irradiated substrate.2012

    • 著者名/発表者名
      M. Sasase, H. yamamoto, H. Kurata
    • 雑誌名

      Thin Solid Films

      巻: 520 ページ: 3490 - 3492

    • DOI

      10.1016/j.tsf2011.12.067

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Radiation effects on film formation and nanostructural changes of iron disilicide thin film2012

    • 著者名/発表者名
      M. Sasase, H. Yamamoto, S. Okayasu
    • 雑誌名

      Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B

      巻: 272 ページ: 318 - 321

    • DOI

      10.1016/j.nimb.2011.01.091

    • 査読あり
  • [学会発表] 高エネルギー重イオン照射によるシリサイド半導体中へのナノ金属相作製2012

    • 著者名/発表者名
      笹瀬雅人、岡安悟、山本博之
    • 学会等名
      第59回応用物理学会学術講演会
    • 発表場所
      早稲田大学(東京)
    • 年月日
      2012年3月16日
  • [学会発表] Semiconductor - metal phase transition of iron disilicide thin films by high-energy heavy ion irradiation.2011

    • 著者名/発表者名
      M. Sasase, S. Okayasu, H. Yamamoto
    • 学会等名
      2nd Nanotoday Conference (NANO2011)
    • 発表場所
      Hawaii(USA)
    • 年月日
      2011年12月20日

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公開日: 2013-07-10  

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