研究課題/領域番号 |
23561029
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
義家 亮 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60293544)
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研究分担者 |
成瀬 一郎 名古屋大学, エコトピア科学研究所, 教授 (80218065)
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キーワード | 微量成分放出評価 / 分光計測 |
研究概要 |
本研究では,元素のオンサイト分析に適した分析方法であるLIBSを用い,ガス中有害微量元素(As,Sb)の検出を行った.石炭ガス化ガス (還元雰囲気)中での微量元素の分析を目標とし,試料は水素化物として供給した.Gate delay等の検出条件のパラメータおよび,雰囲気ガスの種類,レーザーエネルギー,測定場の圧力を変化させることで検出限界の向上を目指した.また,検出限界の大幅な向上を目指して2台のレーザーを組み合わせたダブルパルスLIBSを用いて実験を行った.以下に本研究で得られた知見を示す.(1) Gate delayの値には元素ごとに最適値が存在し,Caでは30μs,Asでは4μs,Sbでは8μsが最適であった.(2) Ar雰囲気ではN2雰囲気と比較して安定で長続きするプラズマが生成されることで, S/Nが約3.9倍向上した.一方で,N2とArの混合雰囲気条件では, S/Nの向上は確認できなかった.(3) レーザーエネルギーは必要以上に増加させても,プラズマの体積を増加させるだけで,プラズマの温度や電子密度は変化させないために,S/Nに影響を与えないことがわかった.必要なレーザーエネルギーは,Asで125mJ/pulse,Sbで150mJ/pulse程度となった.(4) 測定場を減圧していくと,ある程度の圧力までは減圧によるプラズマの安定化効果によって測定対象元素の発光が向上し,Background発光が減少するためにS/Nが向上した.(5) 検出限界は,As(I) 228.8nmで28.3mg/m3,Sb(I)259.8nmで12.9mg/m3となった.この検出限界は,実際の排ガス中濃度と比較して1~2桁不足しており,感度向上が今後の課題である.(6) ダブルパルスLIBSを用いた実験では,シングルパルスLIBSと比較して検出感度が向上しなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付申請書の【1】と【2】は平成23年度のうちに完了した.ICCDの故障により当初予定から遅れていた【3】の課題についても平成24年度においてその検討を完了した.ただし,その結果は前述のとおり,「シングルパルスLIBSに対してダブルパルスLIBSによる感度向上は確認できない」という残念なものであった.これについては二つのレーザー焦点位置関係の影響,レーザーパルス間ディレイの影響など,広範囲の条件にわたって模索したが,感度向上に至らなかった.一方,研究が進むにつれて,我々の測定対象とするAs(およびその後追加されたSb)は,石炭ガス化ガス中においてほとんど気相に存在することが分かった.よって当初計画の【4】にある単一粒子LIBSの検討はスキップする.なお,平成24年度中にレーザー故障が発生し,新たにYAGレーザーを購入事態となった.研究費使用計画においては大幅な計画変更を余儀なくされたが,一方で平成24年度購入予定であった赤外線ゴールドイメージ炉については,既に保有している他の電気炉を流用する見通しが立った.
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今後の研究の推進方策 |
前述のとおり,レーザー故障により平成24年度予算執行に関しては大きな計画変更があったが,他の電気炉の流用に目途がたったため,それを用いて平成25年度中の石炭ガス化ガス中微量成分計測実験装置の構築を行う.前年度に引き続き,当初計画から半年程度の遅延があるが,年度内には研究実施計画の【5】について結果の第一報が得られることを目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究費利用は基本的に消耗品および旅費を中心としており,大きな備品購入の予定はない.消耗品の内訳は,主として前述の電気炉(流用品)再セットアップの費用および,光学部品の追加購入である.
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