石炭ガス化ガス等に含まれる有害微量成分に関する簡便かつ迅速な分析手法の確立を目的として,発光分光の原理にもとづく直接分析法の一種であるレーザー誘起プラズマ分光法(LIBS: Laser Induced Breakdown Spectroscopy)を取り上げ,二本のレーザーを用いるダブルパルスによるシグナル増大や減圧条件によるS/N比向上の効果を検討した.また,最終年度には実際に石炭試料のガス化実験を行い,そこに含まれる微量元素をオンラインで測定した. まず水素化物発生装置で得られる既知濃度の気相微量元素を測定チャンバーに導入して,各分析条件による LIBSシグナル強度を比較した.分析対象元素としてはヒ素(As)およびアンチモン(Sb)に注目した.大気圧条件で,測定波長とゲート幅を最適化した結果として,AsおよびSbの検出限界はそれぞれ28mg/m3 および13mg/m3という値が得られた.また,減圧条件にでS/N比は2倍まで向上した.一方,シングルパルスLIBSと比較して,ダブルパルスLIBSによるシグナル増大・感度向上の効果はほとんど得られなかった. ラボスケールの電気炉を用いて石炭ガス化実験を行い,そこで発生するガス中のAsおよびSbの分析を行った.一般的な瀝青炭(微粉炭)にAsおよびSbを300ppm程度含浸させた試料を調製し,これをセラミックスボートに充填して石英反応管の中に設置し,100℃/minで急速昇温して生成するガスをLIBSの測定チャンバーに導入した.ガス雰囲気は空気による燃焼条件と窒素による熱分解条件とした.熱分解条件では,様々な炭化水素成分から発生するスペクトルが干渉してLIBSシグナルを確認できなかった.しかし,燃焼条件ではSbの線スペクトルを確認し,温度が上昇するにつれてSbが揮発してガス中濃度が高まる傾向が示された.
|