研究課題/領域番号 |
23561034
|
研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
君島 真仁 芝浦工業大学, システム工学部, 教授 (10298143)
|
キーワード | 固体酸化物形燃料電池 / ガスタービン / 高効率発電 |
研究概要 |
平成24年度は、以下のような研究活動を展開した。 1. 前年度に構築したSOFCの動特性解析モデルを用いて,制御系設計について検討を行った。SOFCの作動に必要な制御としては,負荷変動への追従のための出力制御,本体の熱管理のためのセル温度制御,燃料改質を適正に行うためのS/C(水蒸気とメタンのモル流量比)の制御,効率維持のための燃料利用率の制御が挙げられる.これら4つの制御を同時に行いながら負荷変動追従運転を行う場合の特性を解析し、制御系の間の相互干渉の特性を明らかにすることができた。4つの古典的なフィードバック制御系を構築することで、負荷変動追従と発電効率維持の両立が可能であるとの見通しが得られたことは、大きな成果であると考えられる。また、研究交流のあるポーランドアカデミー科学技術大学のJanusz Szmyd教授の協力の下、出力300W級のセルスタックを用いた動特性実験を実施し、提案した制御方法の効果の検証に取り組んだ。作動条件が上記の数値シミュレーションのケースと完全に一致していたわけではないが、負荷変動を想定した電流操作に応じて燃料流量を操作することで、燃料利用率を維持しながら出力を制御することが可能であることを確認することができた。これらの研究成果は既に国際会議で発表しており、海外の論文誌への投稿を予定している。 2. ガスタービンの動特性解析モデルについては、圧縮機とタービンの回転系ならびに燃焼器の基本的な数学モデルを構築し、個々の計算コードを作成したが、ガスタービン全体としての組み合わせた場合の計算コードを完成させることができず、性能予測・評価が行える段階にまで到達することはできなかった。 3. 再生熱交換器の動特性解析モデルについては、プレートフィン型熱交換器の基本設計を完了させ、数学モデルの構築まで実施したが、計算コードの作成には着手することができなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
SOFCの運転においては、発電効率維持の観点から燃料利用率の制御は重要であり、部分負荷時に燃料流量を減少させることが得策であることが知られている。しかし、負荷急増に対応するため電流を急激に増加させると燃料不足状態の発生する可能性が高くなるという問題があり、これを回避するような制御手法の確立が重要な課題となる。本年度の研究を通じて、この課題に対する興味深い知見として、セル温度制御が燃料不足状態の回避に影響を及ぼすことが明らかとなった。4つの制御系は相互に影響を及ぼし合うが、いずれも制御パラメータを適切にチューニングすることで良好な制御経過が得られることがわかったことは重要な成果である。提案した制御系の有効性を検証するための実験も実施しており、数値計算の結果と実機の挙動とが定性的には一致することが確認できている。このように、SOFCのモデリングと制御系に関する検討は計画通りに進めることができた。一方、ガスタービンのモデリングが遅れており、ハイブリッドシステム全体のシミュレーションを行うまでには至っていない。作業の遅れの主たる要因は、ガスタービン設計のための流動解析の環境整備に時間を要したことである。本研究で対象としているハイブリッドシステムにおいては、半径流型の圧縮機とタービンを採用したマイクロガスタービンを利用する。そのローターの設計のために流路内のガス流動の数値解析を行うことが有効であることから、CFDの援用に取り組んでいる。低コストで環境整備を行うため、Open CFDを導入しているが、これをターボ機械に適用した事例が極めて少ないため、試行錯誤に時間を要した。本年度末には、タービン内の流れを解析できるようになったので、それにもとづいてタービンの設計を進めたが、ガスタービン全体のダイナミクスを予測するための解析コードの構築については、十分な検討を行うことができなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、まず早い段階でガスタービンのダイナミクスについて検討するための計算コードを構築し、早急にハイブリッドシステムのモデリングに着手する必要がある。個々の要素のモデリングについては検討済みであるので、次年度にはガスタービン全体の計算コードを完成させ、SOFCと組み合わせてハイブリッドシステムの性能予測・評価に取り組みたい。SOFC-GTハイブリッドシステムにおいては,ガスタービンは発電装置としての役割とともに、セルの温度制御のための空気流量操作という重要な機能を担う必要がある。駆動熱源がSOFCの排熱となることから、SOFCの発電状態がガスタービンの入力に影響して作動状態の変化をもたらす。それが逆にSOFCの発電状態に影響を及ぼすため、両者の作動状態を適切に維持するようなシステム設計と制御の方法を見いだすことが必要である。これまでの経験から、SOFCとガスタービンの出力応答の時定数に大きな差があることから、制御の難易度はそれほど高くないと予想しているが、それを裏付けるような解析結果が得られるか、十分に検討したい。ガスタービンの応答性がSOFCの制御性能に及ぼす影響を明確にするとともに、システム全体を安全かつ高効率に運転する制御手法の確立に向けた検討を進め、本研究課題の総括を行う。研究成果の公表については、国内外の学会での発表するとともに、ホームページを利用した情報発信を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
主に計算機環境の整備(周辺機器の追加、ソフトウエアの更新)に使用する。また、研究成果の対外発表のための出張旅費として使用する。
|