研究課題
・C. merolae(以降「シゾン」と略す)の発光レポーター株の作製: 生物発光リアルタイム測定法でリズム変異体を効率良くスクリーニングするためには、綺麗で再現性の良い発光リズムを示す標準型株が不可欠である。発光レポーター株を作製するにあたり、市販の高発光型ルシフェラーゼ遺伝子のシゾン細胞内における発現を調査したところ、十分な効率が得られなかったので、同じタンパク質をコードし、シゾンの核ゲノムのコドン使用頻度に最適化した遺伝子を人工合成した。次に、シゾンのDNAアレイ実験のデータから発現が日周変動していると思われる遺伝子を数十個ピックアップし、さらにその中から、発現レベルが高いと予想される遺伝子を9個選抜した。そして、これらの遺伝子のプロモーター配列をクローニングし、それぞれを人工合成した発光遺伝子と接続して、発光レポーター遺伝子カセットを作製した。また、同時並行して、シゾンの核ゲノムの特定の部位に外部から遺伝子移入を行うためのターゲッティングサイトとターゲッティングベクターを開発した。このターゲッティングベクターに、それぞれの発光レポーター遺伝子カセットを組み込んだベクターを作製した。そして、野生型シゾンに対して、発光レポーター遺伝子の移入を行った。現在、発光レポーター遺伝子が設計通りに組み込まれた発光株の選抜を進めている。 その他の研究として、以下の2つを実施した。(1)藍色細菌における生物時計による水チャンネル遺伝子発現の制御に関する研究、(2)藍色細菌の時計関連タンパク質SasAを介した生物時計タンパク質からの時間情報の伝達機構の解明。これらの研究成果は学術論文として発表した。
3: やや遅れている
市販の生物発光レポーター遺伝子は、原始紅藻シゾンの細胞内で十分な発現を示さなかったので、発現効率を改善するために、コドン使用頻度を最適化した発光レポーター遺伝子の人工合成を行った。また、発光レポーター遺伝子のシゾンのゲノムへの遺伝子移入効率が予想以上に低かったため、発光レポーター株の作製に予想以上の時間を要してしまった。
(1)リズム変異体の大規模スクリーニングと分離した変異体の分類: まず、23年度に開発した発光レポーター遺伝子発現ベクターを使用して、リズム変異体のハイスループットスクリーニングに使用可能な発光レポーター株を確立する。野生型発光株をEMS(ethyl methane sulfonate)で処理して突然変異を誘発する。そして、「ハイスループット生物発光リアルタイム測定システム」を用いて、遺伝子発現を生物発光として連続的に自動測定する。リズムの周期や位相(タイミング)および振幅に野生型と顕著な差異が観察される変異体を多数分離し、表現型に基づいて分類する。23年度に開発した発光レポーター遺伝子発現ベクターを使用して、24年度はリズム変異 (2)変異体の全ゲノム配列解析による原因遺伝子候補の同定: 変異体が十分な個数(例えば100個)分離収集できた時点で、変異表現型が類似した各変異体からDNAを調製し、それぞれに異なるタグDNAを付加して(DNAにバーコードラベルを付加して)プールし、次世代シーケンサーSOLiD 5500xlを使って全ゲノム配列を解析する。標準株と異なる塩基(主に置換)を全て抽出し、各遺伝子座上に変異をマップする。リズム変異に関係する重要な遺伝子であれば、同一遺伝子座上に何度も塩基変化が出現すると予想できるので、そのような塩基変化が何度も見つかる遺伝子が時計に関係する遺伝子(時計遺伝子を含む)の候補である。 (3)特定した遺伝子が時計遺伝子であることの確認: 各変異体に野生型の原因候補遺伝子を移入し、変異表現型が野生型に戻ることを確認し、候補遺伝子が変異体の原因遺伝子であることを確認する。また、遺伝子ターゲッティングによる遺伝子破壊体や過剰発現体を作製し、リズム表現型や自身の遺伝子発現、候補遺伝子相互の発現制御などを調べることで時計遺伝子であることを確認する。
リズム変異体のハイスループットスクリーニングに利用可能な生物発光レポーター株をシゾンで確立するための試薬類や器具類を購入する。作製したシゾンの発光株の生物発光レベルやパターンをより簡便かつ迅速に確認するために、簡易型の発光測定機を特注で製作する。また、ハイスループットスクリーニングを実施するための試薬類と器具類を購入する。目的に適う突然変異体が得られれば、次世代DNAシーケンサを使用した全ゲノム解析を行うので、そのための試着類を購入する。また、次世代DNAシーケンサの利用料金を支出する。
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Genes Cells
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doi: 10.1111/j.1365-2443.2012.01597.x
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