昨年度に引き続き、C. merolae(シゾン)において、生物発光リアルタイム測定法でリズム変異体を効率良くスクリーニングするために、綺麗で再現性の良い発光リズムを示す発光株の確立を進めた。まず、昨年度作成した9種類のレポーター株を用いて、生物発光リズムが再現良く測定できる条件を検討したが、十分な条件を見出せなかった。いずれのレポーター株も発光レベルが十分であったが、リズムの振幅が低く、高発光のまま光り続けてしまう傾向があった。細胞内における発光タンパク質の分解速度が遅く過剰蓄積している可能性が高かったため、発光タンパク質に分解シグナルを付加して、安定性を低下させることにした。タンパク質分解シグナル配列を付加した発光タンパク質をコードする人工的な遺伝子(EL2)を設計してシゾンのコドンに最適化して人工合成した。EL2をシゾンの4種類のプロモーターそれぞれと接続してレポーター遺伝子を作製し、それぞれをシゾンのゲノムに遺伝子移入した。新たに作成した発光レポーター株は、以前のレポーター株と同等の生物発光レベルを示し、発光レベルの変化も鋭敏になったが、依然として、ハイスループットなスクリーニングに十分ではなかった。プロモーターの選択や測定条件の再検討を進めている。また、これらの過程で、シゾンの遺伝子操作(形質転換体作成)における新たな選択マーカー遺伝子を開発した(論文作成中)。 その他の研究として以下の3つの研究を実施して、論文を発表した。(1)代表者が高等植物で発見した時計遺伝子PCL1の単細胞性真核緑藻クラミドモナスにおける類似遺伝子ROC15が、生物時計の光リセッティングに重要であることを明らかにした。(2)藍色細菌におけるイオンチャンネルの機能と生物時計で制御される発現タイミングの相関を明らかにした。(3)藍色細菌の時計タンパク質KaiBとKaiCの相互作用を明らかにした。
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