研究課題
精巣内から取り出した精母細胞をex vivoで培養し、その条件下で細胞が成長期を経て減数分裂まで完了できることを確認した。次にゴルジ体等に局在するCOPI複合体のγサブユニットにRFP蛍光タグを付加した融合タンパクを精巣内の細胞で発現させ、ゴルジ体を蛍光標識した。この個体から精母細胞を取り出し、ex vivoにて減数分裂を観察した。雄減数分裂ではゴルジ体が娘細胞に均等分配されることがわかった。メンブレントラフィックの阻害剤であるプレフェルジンA、小胞輸送に関わる微小管の重合阻害剤コルヒチンを培養系に添加すると、ゴルジ体や小胞体の形成、維持あるいは減数分裂における分配が影響を受けた。これらの薬剤処理により減数分裂時の細胞質分裂も阻害されることから、雄減数分裂細胞の細胞質分裂においてメンブレントラフィックが重要な役割を演じることがわかった。また、小胞体からゴルジ体への小胞輸送を担うCOPII複合体の5種類の構成タンパク質をそれぞれノックダウンあるいはノックアウトしても減数分裂時の細胞質分裂が阻害された。タイムラプス観察の結果、細胞膜の貫入が途中で停止し、もとにもどるのが観察された。この結果は、COPIのみならずCOPIIによる小胞輸送も細胞質分裂に必要であることを示す。また、精母細胞においてRFP-TubulinとGFP-Larp1を同時発現させ、微小管とミトコンドリアをそれぞれ蛍光標識した。雄減数分裂の過程でミトコンドリアが分裂後期から終期にかけてセントラル微小管上を均等分配される様子をタイムラプス観察した。現在、微小管モータータンパク8種類をそれぞれ精母細胞特異的にノックダウンして、ミトコンドリア分配に影響を及ぼすものをさがしている。ゴルジ体についても同じように雄減数分裂において伝達される過程をタイムラプス法により観察した。ゴルジ体の分配には細胞質ダイニンが必要であった。
1: 当初の計画以上に進展している
小胞輸送は細胞内のメンブレントラフィックの中で中心的な役割を演ずる。そのうち小胞体で合成されたタンパクをゴルジ体に運ぶ順行輸送には被膜小胞COPIIが必要であり、逆にゴルジ体から小胞体にタンパクをもどす逆行輸送にはCOPIが必須である。このうちすでにCOPIが雄減数分裂における細胞質分裂に必須なことを示した(Kitazawa et al., 2012)。それに加えて、COPIIの全サブユニットを精母細胞特異的にノックダウンあるいはモザイク法により突然変異ホモの精母細胞を作り、観察することに成功した。COPIIによる順行輸送も細胞質分裂に必須であることがわかった。COPIのノックダウンでは分裂面に必要なタンパクが輸送されず、細胞質分裂の開始が阻害されていた。一方、COPIIのノックダウンでは細胞質分裂は開始するものの、収縮環が安定せず、細胞膜の貫入が途中で停止し、もとにもどることがわかった。小胞輸送タンパク複合体が細胞質分裂において異なる役割を果たすことが始めて明らかとなった。これは予想以上の成果である。
ゴルジ体およびミトコンドリアが雄減数分裂において均等分配されるようすをタイムラプス観察できるようになった。さらにゴルジ体分配に微小管、モータータンパクダイニンが必要なことを示したので、さらにモーターとゴルジ体をつなぐアダプターも同定し、その伝達機構について明らかにする。さらにミトコンドリアの均等分配においても必要な細胞骨格、モータータンパクを同定する。また、COPIIが細胞質分裂の進行に果たす役割を明らかにする。とくに収縮環の膜への結合に必要なタンパク、脂質との関連を明らかにする。さらに上記のオルガネラが体細胞分裂において伝達される様子を、幼虫期神経芽細胞を用いて観察する。蛍光タンパクを神経芽細胞特異的に発現誘導させる。これには神経芽細胞特異的に転写因子Gal4を発現させる系統を用いる。幼虫の中枢神経系からトリプシン処理 により細胞を分取し、上記と同じようなノックダウン実験や阻害剤の影響試験もおこなう。
主にショウジョウバエ飼育費18万円、抗体・細胞染色試薬21万円、生化学試薬21万円、ガラス・プラス チック器具10万円の使用を予定している。最終年度であるので、成果発表のために旅費を10万円に増額して使用する予定である。
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