研究概要 |
ショウジョウバエのマルピーギ管は哺乳類の腎臓に相当する器官であり,体液中の老廃物を尿酸結晶として排出する.マルピーギ管は先端から4つの領域 (initial, transitional, main, proximal) に分けられ,2種類の細胞, 主細胞と星状細胞によって構成される.主細胞は外胚葉由来で核が大きく特異的に転写制御因子 Cut を発現する.それに対し, 星状細胞は中胚葉由来で核が小さく特異的に転写制御因子 Teashirt (Tsh) を発現する. ショウジョウバエのホメオドメイン型転写制御因子Defective proventriculus (Dve) には2種類のアイソフォーム (Dve-A, Dve-B) が存在する.マルピーギ管における Dve の発現を各発生段階で調べた結果, Dve-Aは3齢幼虫期以降の全ての領域で発現しており,星状細胞よりも主細胞での発現が強いこと, そして Dve-B は transitional, main segment の主細胞で強く発現し, 星状細胞では発現していないことが明らかとなった. Dve を強制発現した星状細胞の核は一回り大きくなり, 主細胞特異的に発現する Cut の発現が誘導された.興味深いことに, Dve の発現が増加した星状細胞の細胞境界において,セプテートジャンクション構成因子 Discs large (Dlg), Coracle (Cor) の発現が増強していることも観察された.一方,Dve の発現が完全に消失した主細胞の核は有意に小さくなり, Cut の発現も消失した.また Dlg, Cor の発現も消失していた.つまり,一度決定されたマルピーギ管細胞の運命は,Dve の発現レベルに応答して正しく維持されるという可能性が強く示唆された.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は,消耗品 1,200,000 円,旅費 300,000 円,その他 (印刷費等) 100,000 円, 計 1,600,000 円を予定している。
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