研究実績の概要 |
本研究課題は、哺乳類培養細胞の温度感受性変異株を用いて、染色体安定性維持機構に関連する遺伝子を分離し、その機能を明らかにすることを目的とする。研究対象とする温度感受性変異株には、DNA合成活性の低下やS期での細胞周期の異常などの表現型を示すものも少なくない。そこで、変異株中の複製反応を評価できる実験系を確立し、複製反応と染色体不安定性との関連を明らかにする。 平成26年度は、温度感受性変異株tsTM3について、Uba1の温度感受性変異と複製反応に関する研究成果を学会発表するとともに原著論文として発表した。 また研究期間全体の成果として、染色体安定性維持機構に関連する遺伝子の探索と機能解析に関して、tsTM3株の原因遺伝子がユビキチン活性化酵素Uba1であることを同定した。さらに制限温度下のtsTM3株では、核内のユビキチン化活性の低下に伴って複製関連分子の分解に異常が起こることを見出した。これは核内のUba1の減少と反比例しており、Uba1の温度感受性変異が複製反応に影響を与える有力なメカニズムとして提案した。これらの成果を国内外の学会にて発表するとともに、原著論文として発表した(Sugaya et al. PLoS ONE, 2014)。また、DNA複製反応の解析系の確立に関しては、各種の核酸前駆体アナログを用いたDNA複製反応の評価を行った。この成果の一部をUba1の温度感受性変異と複製反応の研究成果と合わせて学会発表するとともに、原著論文として発表した(Sugaya et al. FEBS Open Bio, 2015)。さらに、Uba1の核内分布と機能に関する研究成果を原著論文として発表した(Sugaya et al. Genes Cells, in press)。以上、温度感受性変異株tsTM3の解析に関して、ユビキチン活性化酵素Uba1の核内における機能の一端が解明されるなど計画以上に研究が進展した。
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