研究課題
本研究はモモジロコウモリMyotis macrodactylusが知床半島~北方四島にかけての海上を飛翔し採餌行動をおこなっているという知見に対し、詳細な調査をおこなうことによって海上のコウモリの生態について明らかにし、知床海域での適応的意義を考察することを目的としている。根室海峡を飛翔する個体はどこから飛来するのか、また、知床半島と北方四島間での頻繁な個体の移動があるのかどうかを明らかにするため、知床半島、海上、国後島において3年間でのべ1000個体以上を捕獲し、標識を装着して放逐してきた。現在のところ、知床半島および国後島間での直接的な個体の移動は確認されていない。加えて、知床半島および国後島の個体群間でどの程度遺伝的隔離が進んでいるかを評価することを目的とし、得られた飛膜よりDNA抽出を行いミトコンドリアDNAのCytb遺伝子の塩基配列決定をおこなった。現在集団遺伝学的解析をすすめているところである。今後どの程度遺伝的隔離が進んでいるかを考察することにしている。コウモリ類が海上で採餌をおこなっているかを明らかにするため、捕獲された個体の毛または皮膜について安定同位体比解析をおこなった。解析は、連携研究員の中下留美子氏がおこなった。また、より確実にコウモリの餌動物に対する海洋生態系の影響を評価するため、コウモリの餌資源の影響が体毛または皮膜の安定同位体比に反映されるまでにどの程度の時間がかかるのかを明らかにすることを目的とした飼育実験も昨年度に引き続き今年度もおこなった。この結果、体毛より皮膜について、餌資源の影響が比較的短時間で反映されることが明らかとなった。このため、捕獲調査によって得られた皮膜試料を中心に解析を行い、海上での採餌行動があるのかどうかについて考察することにしている。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件)
Biodiversity and Biogeography of the Kuril Island and Sakhalin
巻: 4 ページ: 78-81