研究課題/領域番号 |
23570016
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
山村 靖夫 茨城大学, 理学部, 教授 (50202388)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 環境 / 植物 / 生態学 / 植生動態 / 植生分布 |
研究概要 |
植物の生育にとって窒素(N)とリン(P)のどちらがより制限的であるかを示す指数として、植物体のN:P比や落葉時のN・P回収率の二つが有効と考えられる。富士山の貧栄養地の植生にこれを適用して有効性を検証し、植生構造および一次遷移過程とN・P制限の関係を明らかにすることを目的とし、初年度の計画として次の2つのことを行った。1.標高1000mにある溶岩流上のアカマツ林で、亜高木層に優占する常緑広葉樹ソヨゴと落葉広葉樹ミズナラのシュート(葉を含む先端の枝)と落葉、土壌を定期的に採取し、窒素とリン量を分析した。調査のスタート時期が予定より遅れ、まだ一年のサイクルを完了していないが、途中段階での結果は以下の2点にまとめられる。(1) 落葉時の回収率とシュート単位での栄養塩収支の解析から、両種ともに窒素よりリンの方が保存的であり、ソヨゴの方がミズナラより保存的経済を有していることが示唆された。(2) 葉のN:P比は、いずれの種でも有意な偏りが検出されず、指標としての有効性をさらに検討する必要性がある。2.一次遷移過程と栄養塩の関係を明らかにするための基礎情報を得るため、北側斜面一帯の森林限界付近において、空中写真の識別判定とGPSを用いた植生分布調査によって植生分布図を作成し、精細な位置標高データを用いて、植生分布特性と地形・地質の関係について統計分析を行った。その結果、森林限界の主要樹種であるカラマツやダケカンバの分布は、地形要因と密接な関係が認められ、ダケカンバ林は谷地形で発達することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年3月の東日本大地震により所属する研究機関、研究室が被災し、年度当初はその復旧に努力を集中したため、本課題における野外調査や試料採取の開始が年度計画より約2ヶ月遅れてしまった。樹木の葉の展開と、常緑広葉樹の落葉は初夏までに集中するが、この時期の試料採取は一部が行えなかったため、前年に行った予備的調査とそこで採取した試料から得たデータを今年度のデータに加えて解析を行った。途中段階のデータからの暫定的な結果であるため、この項目について予定していた学会発表は見合わせることにした。年度後半に入ってからは予定通り研究を進めることが出来ており、次年度前半まで調査を継続させることによって、当初の目的を達成できる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の計画で完了していない項目の継続を含めて、以下の項目に絞り確実に実施し、項目1と2については年度中に研究成果を取りまとめて発表する。1.溶岩流上の森林での常緑・落葉広葉樹の栄養塩制限の解析のための、調査および試料採取を新シュートの展開直後(初夏)まで継続し、試料の分析とデータ解析を行い。2.森林限界植生の分布様式と植生変化を空中写真と野外調査によって解析する。3.森林限界植生の栄養塩制限の解析として、年代の異なるスコリア上に成立した森林間で、土壌と優占樹種の栄養塩濃度を比較する。
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次年度の研究費の使用計画 |
申請時の計画通り、(1) 野外調査と研究発表のための旅費、(2) 野外調査と分析実験・データ入力のための謝金、(3) 空中写真、野外調査および実験にかかわる器具や薬品などの消耗品のために使用する。
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