研究課題/領域番号 |
23570017
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
徳永 幸彦 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (90237074)
|
研究分担者 |
今藤 夏子 独立行政法人国立環境研究所, 生物圏環境研究領域, NIES特別研究員 (10414369)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | Callosobruchus / Wolbachia / 生殖隔離 / 細胞質不和合 / 速い進化 |
研究概要 |
研究室に保有している地域系統(対象を当初の5系統から9系統に増加)すべてについて、単方向性および双方向性細胞質不和合のパターンを明らかにした。また、アカイロマメゾウムシに既知のWolbachia系統以外に、新たなWolbachia系統も発見し、これら2種類を区別することのできる遺伝マーカーを開発した(今藤氏の貢献)。その結果、細胞質不和合を起こすのは4系統で、そのすべてにWolbachiaが感染しており、残り5系統のうち4系統もWolbachiaに感染しており、残り1系統はWolbachiaに感染していないことが分かった(徳永の貢献)。 アカイロマメゾウムシにおけるWolbachiaの伝搬率はほぼ100%であった。一方、細胞質不和合の度合い(孵化率)は大きくばらつき、そのばらつきの度合いは、掛け合わせるアカイロマメゾウムシの系統の組み合わせ方にも大きく依存した。また、1雌由来の子孫集団に注目しても、孵化率は大きくばらつくことが分かった。この知見は従来の理論モデルの予測、すなわちWolbachiaの伝搬率が100%の時は不和合の度合いは強くなるという予測とはとは大きく異なるものであった。 そこで、従来の理論モデルをレビューし、それらのモデルの元となっているFineの基本モデルについて再検討を試みた結果、Wolbachiaの伝搬率が100%の時はむしろ、不和合の強さはばらつきやすくなることを理論的に明らかにした。 分子遺伝的な成果は今藤氏が中心となって、現在論文執筆中である。アカイロマメゾウムシにおける細胞質不和合のパターンや、不和合性の進化についての理論モデルについては、サイエンスインカレ、および日本生態学会にて発表を行った。これらの研究成果についても、徳永を中心に論文執筆中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画よりもアカイロマメゾウムシの系統数を増やしたものの、精力的に実験を行うことによって、すべての組み合わせについての細胞質不和合のパターンを明らかにすることができた。Wolbachiaの分子マーカーについても2012年になってすぐにプライマーを完成した。以上のように、当初の予定通りの進行状況であると判断できる。
|
今後の研究の推進方策 |
今回開発されたWolbachiaのマーカーと、現在今藤氏が開発中の簡易遺伝子抽出を用いて、大量のマメゾウムシ個体に対してWolbachia系統のPCRチェックをしていく予定である。また、交付申請時の予定通り、ヨツモンマメゾウムシ、ローデシアマメゾウムシ、そしてCallosobruhus subinnotatusについても、掛け合わせ実験を進めていく予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に整備した遺伝マーカーとPCR機器を用い、大量の個体についてWolbachiaの有無や種類の同定のためのPCR解析するために、分子遺伝学的消耗品を購入する。また、Wolbachiaを人為的に除去/挿入するためのマイクロインジェクション用の機材、およびテトラサイクリン入りの人工豆や飼料作成のための材料を購入する。アカイロマメゾウムシとヨツモンマメゾウムシの交配実験を行い、その際交尾行動を詳細に観察するために、自動観測装置を購入する。成果発表のために学会発表や研究打ち合わせを行うため、旅費を使用する。データ解析のための補助研究員を雇うため、人件費を使用する。
|