研究課題/領域番号 |
23570017
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
徳永 幸彦 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (90237074)
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研究分担者 |
今藤 夏子 独立行政法人国立環境研究所, 生物圏環境研究領域, NIES特別研究員 (10414369)
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キーワード | Callosobruchus / Wolbachia / 生殖隔離 / 細胞質不和合 / 速い進化 |
研究概要 |
アカイロマメゾウムシは少なくとも2種類の異なるWolbachiaが感染していることが明らかになった(今藤の貢献)。しかし、昨年(2011)行った解析の結果では、研究室で保有するアカイロマメゾウムシ9系統のうち、1系統がWolbachiaに感染されていないと判断されていたが、本年度簡易DNA抽出方法の改良を行った結果、9系統すべてがWolbachiaに感染されていることが明らかになった(徳永の貢献)。当該系統のWolbachia非感染を前提として行っていた実験がすべて振り出しに戻り、Wolbachia非感染系統はテトラサイクリンを使って作り直し、再度実験をすべてやり直すことになった。 Wolbachiaのテトラサイクリンによる除去と同時に、インジェクションによる導入も試みた。前述の失敗の副産物として、すでにWolbachiaを持っている系統に、他の系統のWolbachiaを導入すると、系統の組み合わせによって細胞質不和合に一定のパターン、すなわち、当該Wolbachiaとのつきあいの長さが長ければ長いほど、細胞質不和合の度合いが低くなることを明らかにした。また、アカイロマメゾウムシのWolbachiaを、インジェクションにより同属の他種に導入する実験も行い、導入率が非感染のアカイロマメゾウムシに導入した場合に比べ、大きく低下することを明らかにした(徳永の貢献)。 Wolbachiaの感染パターンとアカイロマメゾウムシの系統関係を解析した結果、片方のWolbachiaが系藤樹の根元で感染し、それに新しいWolbachiaが再度感染したという進化シナリオが明らかになった(今藤の貢献)。 以上の成果を第60回生態学会にて発表した他、現在複数の論文を執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の成果としてのアカイロマメゾウムシのWolbachia感染パターンの解析に間違いがあったものの、失敗の副産物として、Wolbachiaの細胞質不和合の度合いがhostとの共進化の産物である直接的な証拠をつかむことができた。簡易DNA抽出はほぼ確立できたと思われ、数百個体規模の大量のPCR解析が廉価にできるようになった点は特筆に値すると思う。また、筑波大学生物科学専攻の千葉親文先生の御好意でマイクロマニュピュレーターを導入することができたため、インジェクションの成功率も向上することができ、等質で大量のインジェクションが行えるように技術革新することができた。
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今後の研究の推進方策 |
1) アカイロマメゾウムシに見られる2種類のWolbachiaの感染パターンとアカイロマメゾウムシの系統関係を明らかにする(今藤担当)。 2) 2種類のWolbachiaをインジェクションすることによって、Wolbachiaとアカイロマメゾウムシの共進化の度合いを細胞質不和合の強さによって評価し、Wolbachiaのもたらす細胞質不和合のCallosobruchus属内部の種の壁への貢献度を明らかにする(徳永担当)。 3) 平成23年、24年度の予備実験により、アカイロマメゾウムシと近縁な3種(ヨツモンマメゾウムシ、ローデシアマメゾウムシ、C. sabinnotetus)の間では異種間交配後F2が得られないことが明らかになっている。これら近縁種にWolbachiaをインジェクションすることによって、種の壁に揺らぎが現れるかを明らかにする(徳永担当)。 4) 上記研究の成果を国際学術雑誌に発表するとともに、国内外の学会にて発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
徳永の分担金(直接経費700,000円)については、簡易DNA抽出によるPCR解析の薬剤等に300,000円、大量のインジェクションを行うための謝金に200,000円、そして成果発表のための旅費に200,000円を計上する。 今藤の分担金(直接経費300,000円)については、分子系統解析用の薬剤等に150,000円、成果発表の旅費に150,000円を計上する。 なお次年度に繰り越す23,430円(インジェクションにおける蛹の性判別のための撮影機器)の予算執行は2013年3月初旬に行われており、経理の手続きのみが繰り越されることになる。
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