研究概要 |
Wolbachiaを除去したCallosobruchus analisと、同属でWolbachiaに寄生されていない他種3種(Callosobruchus maculatus, C. sabinnotatus, C. rohdesianus)の掛け合わせ実験の結果、いずれも正常発生する受精卵を形成することはなかった。このことから、Wolbachiaがこれら同属内の種分化に寄与したという当初の仮説は棄却された。予備的に行ったC. maculatusとC. sabinnotetusの掛け合わせでは、Rugman-Jones and Eady (2010)らが報告している通り、C. sabinnotatusの雌とC. maculatusの雄の間ではinfertileなhybridが形成されるが、C. sabinnotatusの雄とC. maculatusの雌の間の卵は発生しないことが確認された。しかし、孵化の有無を無視して、産みつけられた卵数について調べてみると、Wolbachiaで見られるCIのパターンと似たパターンが得られた。 WolbachiaがCallosobruchus属の種分化に関与している可能性がほぼ無くなったため、研究の方向性を、WolbachiaとC. analisの共進化の度合いと細胞質不和合(CI)の強さを明らかにすることにした。まずC. analisのWolbachiaを強制的にC. maculatusとWolbachiaを除去したC. analisに導入した場合、その導入個体への定着率はC. analisの方が高かった。ただし、導入されたWolbachiaはC. analisでもC. maculatusでも生殖細胞に入り込むことはなかった。また、CIを起こすC. analisと起こさないC. analisにおいて、CIを起こすWolbachiaがCIを起こさないC. analisに導入された場合に、高いCIを起こすことが明らかになった。すなわち、C. analisに見られるWolbachiaがもたらすCIの強さは、寄主であるC. analisと当該Wolbachiaの関係が長いほど、弱くなることが明らかになった。
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