研究課題/領域番号 |
23570020
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
狩野 賢司 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (40293005)
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キーワード | 産子調節 / 性淘汰 / 卵胎生 / グッピー / 行動生態学 / 配偶者選択 / 受精 |
研究概要 |
本研究課題は、卵胎生魚類グッピーを対象として、雌が産む子の数や大きさを操作するため、雄と交尾してから卵を受精するまでの期間を調節しているという仮説を検証するものである。これまでの研究結果から、配偶した雄に対する好みの程度に応じて、雌が産む子の数や大きさなどを調節していると予測されるが、それらの産子調節には雌が雄と交尾してから卵を受精するまでの期間が重要であり、大きな子を多く産むには受精までの時間を長くして、その間に多くの熟卵をつくっていると考えられる。雄に対する雌の配偶者選好性を測定した後、雌を雄と交尾させて、適切な期間をおいて開腹し、卵や胚を観察する手法で、雌の配偶者選好性と交尾から受精までにかかる時間、熟卵や受精後の胚の数や大きさの関連を検討した。 これまで、雄と配偶後、8日目、15日目、あるいは22日目の雌を開腹し、卵や胚の状態を観察した結果、卵や胚の数は雌の体サイズに強く依存しており、大きな雌は多くの卵・胚を保持していた。一方、配偶した雄に対する雌の選好性は胚の受精時期に影響を与える傾向が見られ、雄に対する選好性が高かった雌ほど早く卵を受精していた。この結果は、雌に2個体の雄を提示した際に、強い選好性を示した雄と配偶した雌は早く産子するという先行研究の結果と一致している。しかし、配偶後22日目の雌においても、半数以下の雌は卵を受精していなかった。この結果は、雄に対する選好性に応じて子の数などを調節する場合、雄との配偶後22日目以降にも雌が受精時期による調節を行っていることを示唆しており、雄との配偶後22日目以降のサンプルが必要であることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
好みの雄と配偶した雌は卵を早く受精させ、発達した胚を保持している傾向が高いという結果が得られたことから、配偶相手に対する選好性に応じて本種の雌が受精時期を調節していることが明らかになりつつある。今後、雄と配偶後22日目以降の雌のサンプルを増やすことによって、卵・胚の数やサイズに対する雌の配偶者選好性の影響、及びそれらと受精時期の関連やトレードオフを検証できると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果から、およそ半数以上の雌が、雄との配偶後22日目以降に卵を受精している可能性が示唆されたため、平成25年度は配偶後22日目以降の雌のサンプルを増やす。これにより、配偶相手に対する雌の選好性が卵の受精時期や卵・胚の数などに与える影響をより明確にすることができ、本種雌の産子調節における受精時期の操作の重要性を明らかにすることができると考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
早期予約による航空運賃の割引が適用できたなどの理由により、出費額を抑制できた。その抑制分が次年度使用額となった。次年度に請求する研究費にこれらの額を加えることによって、雄と配偶後22日目以降の雌のサンプルをできるだけ多く得るように努め、受精時期による雌の産子調節メカニズムの詳細を明らかにするとともに、研究結果の信頼性を高める。
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