研究課題/領域番号 |
23570024
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
丑丸 敦史 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (70399327)
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キーワード | 半自然草地 / 植物 / 植食性昆虫 |
研究概要 |
本申請課題では水田の土地利用の変化による周囲の里草地の植物・植食性昆虫群集の変化(種多様性減少)を定量化し、その変化を引き起こすメカニズムを解明することを目的としており、平成23年度には圃場整備や耕作放棄によって引き起こされる植物群集の変化が植食性昆虫群集の多様性の減少・種組成の変化を引き起こすことを明らかにした。平成24年度は、研究結果の再現性を確認すべく調査の反復を行い、また長野県木曽町開田高原の採草地においても土地利用の変化による植物・植食性昆虫群集の変化が起こされるのかについても研究し、地域間の比較を行った。 兵庫県南東部の29の農地、それぞれ4区画(各区画は5m×50m)、計116区画において5月から10月の毎月、維管束植物の種数および開花種、開花量と、チョウ群集は5月から10月の毎月調査、バッタ群集は8月中旬から9月末までの間に2回調査を実施し、種数および個体数を定量化した。各群集を機能群ごとにグループ化し、植物群集と植食性昆虫群集の多様性相関関係を一般化線形混合モデルで解析した。 その結果、昨年度の発見(多年生植物、植食性昆虫の種多様性は、伝統地で最大で、一年生植物は圃場整備地と伝統地で種多様性は高く、放棄地では低いということ)が再確認された。また、解析から昨年度同様に、土地利用形態ごとの草刈り頻度がそれぞれの多様性に影響を与えていることを確認した。また、開田高原における飼い葉の生産のための採草地においても、同様に草刈り頻度や野焼き頻度の変化に伴う植生高の変化が、植物の種多様性を減少させ、植食性昆虫の多様性の減少を引き起こしていることを示唆する結果を得た。兵庫県と長野県の結果に共通して見られる傾向から、伝統的管理様式を変更し、植生への撹乱頻度が変わってしまうと、植物・植食性昆虫ともにその多様性が大きく減少してしまうという一般的な傾向を見いだしたと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の目的の約7割程度は平成24年度まで結果を得られており、同様の調査方法を用いて新たに採草地における多様性減少の要因がやはり土地利用の変化に伴う撹乱(草刈り・火入れ)頻度の変化であることを解き明かしつつある点。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、昨年度までの二年間のデータから、伝統的営農地間で植物や植食性昆虫類の多様性に差があることが確認できたので、調査対象とした農地の周辺環境(伝統的営農地や人工地の広がりなど)の植物・植食性昆虫の多様性に与える影響についてGISを用いた景観生態学的なアプローチで研究を行う。現在、GISデータの整備を行い、調査地周辺の農地率(伝統地、圃場整備地、放棄の割合)、二次林率、人工地率を算出し、多様性への影響を一般化線形混合モデルなどによって解析をすすめている。 さらに昨年度、圃場整備地での植生の変化について、土壌環境の変化の影響を調べるため、農業環境技術研究所の平舘俊太郎氏らとともに圃場整備地と伝統的営農地の植生調査および土壌環境(土壌pHや有効リン酸体量など)測定のためのサンプリングを行った結果が少しずつ出始めており、今後はそのデータ解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の主な研究費の使用用途は、野外調査のための物品購入、旅費、調査補助者・データ整理補助者・GIS解析補助者への謝金、解析用ソフトウェアの購入、学会・研究への参加旅費、論文の投稿発表のための経費である。
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