研究課題/領域番号 |
23570024
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
丑丸 敦史 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (70399327)
|
キーワード | 半自然草地 / 維管束植物 / 植食性昆虫 / 土地利用 / 生物多様性 / ほ場整備 / 耕作放棄 |
研究概要 |
本申請課題では水田の土地利用の変化による周囲の里草地の植物・植食性昆虫群集の変化(種多様性減少)を定量化し、その変化を引き起こすメカニズムを解明することを目的としている。平成23-24年度の調査結果から、圃場整備や耕作放棄によって植物および植食者群集の単位面積あたりの多様性が大きく減少することを明らかにした。また、植物の多様性減少は、土地利用の変化に伴う草刈り頻度の変化および周辺景観の変化によるものであること、植物(特に多年生草本)の多様性の減少が植食性昆虫(チョウ・バッタ)群集の多様性の減少・種組成の変化を引き起こすことを明らかにしてきた。また、個々の種の減少は、種の持つ生態的特徴(食性幅、サイズ等)に依存しておらず、有占度の低い種ほど土地利用によって消失しやすいことが明らかになり、ランダムロス仮説によって説明可能であることを示すことができた。この内容は、共同して研究を行っている研究室大学院生(内田圭)とともに投稿論文としてまとめ、アメリカ生態学会の機関誌Ecological Monograph誌に受理され、印刷中である。 平成24-25年度は、異なる半自然草地(長野県木曽町開田高原の採草地)においても土地利用の変化による植物・植食性昆虫群集の変化が起こされるのかについても研究し、水田畦畔上の草地と同様に、土地利用の変化に伴う撹乱頻度の変化が植物の多様性を減少させ、植物の多様性減少が植食性昆虫の減少を引き起こしていることを見いだした。この研究結果については、第61回日本生態学会にて発表を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上記の研究結果は、当初の研究計画の目的を上回る結果(ランダムロス仮説で植食者の地域絶滅が説明可能であることを明らかにした点など)も得られており、農地の土地利用変化に伴う生物多様性減少のメカニズムにより迫ることができたと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
現在は、土地利用変化の棚田全体の種多様性(γ多様性)に与える影響に注目して解析を進めており、今後は阪神地域全体の種多様性(地域のγ多様性)が土地利用変化によってどのように減少しているのかを明らかにする予定である。また、開田高原の採草地の研究結果について、解析を深化させ、論文としてまとめる予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究が当初の計画よりも順調に進捗しており、その中で予算を節約することができたので、この節約分をこれまでの研究を完成するための追加調査用の経費、今後の研究発表(論文発表の際の経費、論文校閲、掲載料、カラー印刷代、学会発表等)のための予算として利用することで研究結果のとりまとめ、公表を促進することに有効利用したいと考えたため。 平成26年度の主な研究費の使用用途は、野外調査のための物品購入、旅費、データ整理補助者への謝金、学会・研究への参加旅費、論文の投稿発表のための経費である。
|