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2012 年度 実施状況報告書

送粉系における側所的生態分化と遺伝分化

研究課題

研究課題/領域番号 23570025
研究機関東京学芸大学

研究代表者

堂囿 いくみ  東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (70462489)

研究分担者 牧 雅之  東北大学, 学術資源研究公開センター, 教授 (60263985)
キーワード種間関係 / 送粉系
研究概要

植物の花形質には地理的変異が見られることが多い。このような変異は、地理的隔離による異所的分化と、分化後の二次的な交雑といった視点からこれまで研究されてきた。しかし近年、共進化系の地理的モザイクという概念からのアプローチが注目されつつある。環境が場所によって異なるとき、各地域における植物の生理・生態形質や、送粉者の形質や種構成はその影響を受ける。すると、送粉者による花形質への選択圧の強さや方向が、地域毎に変化することになる。その結果、局所適応がモザイク状に生じ、花形質の地理的な変異がもたらされる。このような局所適応という視点から、繁殖形質(表現型)の生態型分化を明らかにした例は少ない。
シソ科ヤマハッカ属(Isodon)のイヌヤマハッカとタカクマヒキオコシでは、筒状の花の長さに地理的な変異が見られる(4-12mm)。それぞれの種内で、花筒長は高度勾配上で側所的に分化している。これらの送粉者は主に2種のマルハナバチである。ミヤママルハナバチは口吻が短く(8-12mm)、山地性であるが(800-1500m)、トラマルハナバチは口吻が長く(10-17mm)、低地から低山地(100-1200m)に生息する。
これまでの研究の結果、ヤマハッカ属の花筒長、遺伝分化のカギとなる環境要因は,生息地の標高である可能性が示唆されている(Dohzono & Suzuki 2010)。これは、高度環境の変異がマルハナバチの種組成やフェノロジー(開花・マルハナバチ種組成)に影響した結果、標高毎に花筒の長さへの選択圧の強さや方向が変化し、異なる標高間での花粉の移動(遺伝子流動)が制限されたためだと考えられる。本研究は、「標高という環境要因が、マルハナバチの種組成やフェノロジーの変化を通じて、植物の繁殖形質分化と遺伝分化をどのようにもたらすのか」、そのメカニズムを実証的に解明することを目的とする。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ヤマハッカ属の花筒長と遺伝的分化の要因と予想されたのは、生息地の標高である。標高の異なる集団を対象に、側所的な生態分化をもたらすメカニズムを明らかにするため、西日本に分布するタカクマヒキオコシ群を対象とし、以下の点について調査した:(1)マルハナバチ相(種組成)と花筒長の集団間変異、(2)花筒の長さへの選択圧の集団間変異、(3)集団間の遺伝的分化を、高度勾配にそって花筒長変異がみられる兵庫県氷ノ山周辺のタカクマヒキオコシ10集団において野外調査を行った。
(1)マルハナバチ相(マルハナバチの訪花頻度)と花筒長の集団間変異:標高の異なる地点から集団を選び、まずはマルハナバチ・花筒長・フェノロジー(マルハナバチ相・開花)の集団間変異を測定した。結果、高標高の集団では、ミヤママルハナバチの訪花頻度が高く、花筒の長さは短い傾向があった。低標高の集団ではトラマルハナバチの訪花頻度が高く、花筒の長さは長い傾向があった。
(2)花筒の長さへの選択圧の集団間変異:2種のマルハナバチの1回訪花による種子生産量に違いはみられず、花筒の長さとも関係が見られなかった。また、自然受粉による花粉付着量および種子生産量標高のちがう集団間において、種子生産量に違いはみられなかったが、花粉付着量はマルハナバチ相と対応していた。
(3)集団間の遺伝的分化:タカクマヒキオコシ群のマイクロサテライトマーカーを開発のため、サンプリングをおこなった。

今後の研究の推進方策

野外調査は、兵庫県氷ノ山周辺のタカクマヒキオコシの集団において行う。
(1) 花筒の長さへの選択圧の集団間変異:各集団において、マルハナバチ2種の訪花頻度と受粉効率(1回訪花の結実率)を測定する。昨年度のデータとあわせて、花筒長に対する選択圧を推定し、マルハナバチ相の変異が花筒長の変異をもたらす原因かどうか検討する。
(2)集団間の遺伝的分化:開発したマーカーを用いて、集団間の遺伝的分化と遺伝子流動のパターンを解析する。

次年度の研究費の使用計画

(1)野外調査:
氷ノ山の集団において、9月上旬から10月下旬にかけて、4日間×5回、申請者自身と調査補助2名により調査する。
(2)遺伝マーカーによる遺伝的分化の解析
野外調査対象集団から採集した葉のサンプルからDNAを抽出し、マイクロサテライトを用いた集団遺伝解析を行う。Fstを用いた集団遺伝分化の評価に加え、コアレッセントシミュレーションに基づく遺伝子流動の推定を行い、集団遺伝構造を多角的視点から明らかにする。集団間の遺伝的分化や遺伝子流動の程度と、花筒長・マルハナバチ相・標高・地理的距離・フェノロジー(開花・マルハナバチ相)の重なりとの相関を検討し、環境変異と表現型分化、遺伝的分化の関係を解明する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2013

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Development of microsatellite markers for Isodon longitubus (Lamiaceae)2013

    • 著者名/発表者名
      Tadashi Yamashiro, Asuka Yamashiro, Ikumi Dohzono, Masayuki Maki
    • 雑誌名

      Applications in Plant Sciences

      巻: - ページ: in press

    • 査読あり
  • [学会発表] 異なる送粉者相に対応したタカクマヒキオコシ(シソ科)の花筒長変異2013

    • 著者名/発表者名
      星野佑介・堂囿いくみ・鈴木和雄
    • 学会等名
      日本生態学会
    • 発表場所
      静岡グランシップ(静岡県)
    • 年月日
      20130305-20130308

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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