平成25年度(最終年度)の研究実績の概要は以下の通りである。 1)記憶を持つ個体ベース進化ゲームモデルの実装と解析 古典的しっぺ返し戦略を拡張し、過去に対戦した相手と相手が繰り出した行動を記憶する完全記憶しっぺ返し戦略の個体群・進化動態を連続空間上の個体ベースモデルとして実装する枠組みを開発した。シミュレーション解析により、裏切り戦略、協力戦略、完全記憶しっぺ返し戦略の3戦略の空間個体群動態を解析した。また、しっぺ返し戦略個体が持つ記憶力(過去の対戦相手をどれだけ記憶するか)の進化動態を解析した。各個体の空間配置に強く依存するが、概ね、より長い記憶力を持つことが適応的であるという結果を得た。各個体の位置として与えられる点パターンが3つの戦略の動態に大きく影響することを明らかにした。 2)本研究課題で開発した連続空間上の点パターン動態としての進化ゲームモデルを、古典的タカ・ハトゲーム、囚人のジレンマゲームの枠組みに適応し、各個体が与えられた戦略に従って出生・死亡を繰り返す包括的なアプローチに取り組んだ。 3)空間パターンの定量化と進化動態 点パターンを点の数(1次構造)、ある距離だけ離れた2個体からなるペアの数(2次構造)、さらに、3個体からなるトリプレット(3次構造)で記述する理論的枠組みに取り組み、これを各戦略の進化動態に取り組んだ力学系を導出した。本研究課題で取り組む枠組みは本質的には連続空間上の点過程と同一で有り、空間幾何学と密接な関連を持つことを明らかにした。特に点パターンの定量化について、高次構造の定義と意味づけに関する成果を論文としてとりまとめ学術雑誌に投稿した。
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