研究課題
ハイマツ植生への霧水や乾性降下物の沈着量を評価するためには,信頼できる気象観測と現地サンプリングを連続的に実施し,高精度の化学分析を行う必要がある。そこで,以下の3項目について計画し研究活動を進めた.1)標高2860m の浄土山周辺で,降雨,霧,露,気温,日射,風向風速の連続観測を行う。山岳における霧や雨の地表面への沈着は,風向・風速が決定要因の一つであり超音波風速計(新規)と既存のソーラーパネルを組み合わせて観測体制を整える。全天日射の測定を行うためにサーモパイル型の2重ガラスドーム構造の日射計をを設置する。これらのデータは多チャンネルデータロガーによって記録する。これらの計画は平成23年度中に達成された。2)林冠との相互作用を評価するためにハイマツ林内と林外に多数のGutter 型採雨器を設置し,ハイマツ群落の有無が霧水獲得に及ぼす影響を調べる。雪解け後の7月に地形特性の異なった複数のハイマツ林において,10月まで林内雨・林外雨を連続的に採取し,定期的に採水する。さらに,既存のパッシブ型霧採取器によって霧水を採取し,風向風速や濡れ時間,湿度,降雨の情報と統合することで,地表面への霧水沈着量を評価する。これらの採水量と,通常の転倒マス雨量計の結果を比較することで,通常の降雨量データと,実際に植生上に供給される水量の違いを明らかにする。これらの計画は平成23年度中に達成された。また,その成果の一部は論文として発表された。3)採水したサンプルについてはイオンクロマトグラフを用いて陽イオン成分や窒素含有量を測定し,林外雨・林内雨,霧水雨水と比較する。また一部のサンプルについてはH-O同位体分析を行い,林冠における供給-濃縮過程を明らかにする。これらの計画は平成23年度中に一部達成された。未分析サンプルについては平成24年度に実施する.また,その成果の一部は学会発表された。
2: おおむね順調に進展している
夏期の林内雨採取や気象観測は,順調に行えた.また,論文の投稿・出版も行えた.しかし,超音波風速計や日射計の稼働については,納品や現地での設置作業に手間取り9月まで遅れた.また,老朽化したイオンクロマトグラフが故障し,採取したサンプルの分析が滞った.
超音波風速計の安定稼働には電力供給能力の増加が必要である.これについては,連携研究者である富山大学の青木一真准教授と協議して,対策を検討する.老朽化した分析機器については別途予算申請して,更新できるよう努める.
設置した超音波風速計の安定稼働のために,立山山頂における電源供給システムを含めた総合的な設置環境整備に利用する.また,採雨器と霧水サンプラーによる観測を継続し,得られた水サンプルを総合地球研究所などで分析するため,研究旅費が必要となる.サンプルの一次処理は,九州大学福岡演習林分析室にて行うが,イオンクロマトグラフなどの分析装置についての維持管理経費が必要となる.
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Arctic, Antarctic, and Alpine Research
巻: 44 ページ: 143-150
10.1657/1938-4246-44.1
Journal of Environmental Science and Health, Part A: Toxic/Hazardous Substances and Environmental Engineering
巻: 46 ページ: 921-930
10.1080/10934529.2011.584505