研究課題/領域番号 |
23570031
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
山平 寿智 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (20322589)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 進化生態 / 種分化 / 性淘汰 |
研究概要 |
種多様性の緯度勾配の説明として,熱帯は種分化が早いとする仮説が注目されている.しかし,なぜ熱帯は種分化が速いかに関するコンセンサスはない.申請者は,低緯度ほど性淘汰が強いために種分化が促進されるのではないかと考えている.性淘汰の緯度勾配は,高緯度ほど繁殖可能メスの出現が季節的に集中することで生じうる.本研究は,メダカ属魚類Oryziasをモデルに,産卵可能メスの出現の季節的集中度を,温帯から熱帯にかけて緯度の異なる種間/集団間で比較することを最終的な目標ととする.青森と沖縄からメダカO. latipes(温帯種)を,インドネシアのムナ島からウォウォラエメダカO. woworae(熱帯種)をそれぞれ採集し,実験室の共通環境下(26℃,14L:10D)で各種/各集団の産卵特性を比較した.その結果,ウォウォラエメダカよりメダカの方が産卵開始サイズが大きく,またクラッチサイズも大きいことがわかった.また,同じメダカ種内でも,低緯度の集団(沖縄)より高緯度の集団(青森)の方がさらに産卵開始サイズが大きく,クラッチサイズも大きい傾向にあることがわかった.こうした産卵特性の種間/集団間変異パターンは,高緯度の季節的環境で集中的に産卵を行うための適応を反映していると考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書にある通り,本年度は,実験室の共通環境下における産卵特性を,緯度の異なる種間および種内で比較することを目標に掲げていた.採集研究者(インドネシア・サムラトゥランギ大学のダニエル・モコドンガン氏)の都合上,熱帯種が当初予定していたプロファンディコラメダカO. profundicolaからウォウォラエメダカO. woworaeに変更になったが,研究の手法や目的を変えることなく上記の成果をあげることができた.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,野外における産卵可能メスの出現パターンを,緯度の異なるメダカ(O. latipes)集団間で比較する.研究方法の概要は以下の通り.まず,青森と沖縄の2地点に調査定点を設置し,各定点において,4月から8月にかけての月1~2回,各地点からタモ網と四手網を用いてランダム採集を行う.雌雄20個体ずつを活かしたまま室内に持ち帰り,特注の交配用水槽に移す.この際,オスとメスは,仕切りで区切られた左右の区画にそれぞれ分けて入れる.翌朝仕切りを外し,1時間自由に交配させる.1時間内に産卵したメスの個体数を記録し,その割合を‘産卵可能メスの割合’とみなす.得られたデータをもとに,産卵可能メスの割合の季節変化パターンを,両地点間で比較・解析する.また,余剰個体の生殖腺の測定・観察も行う予定である.さらに,インドネシアに生息する熱帯種の採集も5月,10月,および1月に行い,各採集月における産卵可能メスの割合を上と同じ方法で求め,温帯種の季節変化パターンと比較する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
4月から8月にかけて,月1~2回のペースで青森に採集/調査に行く予定であり,そのための旅費に多くを使用することになる.また同様に,インドネシアへの渡航を3回(5月,10月,1月)予定しているので,そのための旅費も必要である.これらの調査では,一部現地スタッフを採集補助員として雇用する.また,室内で行う交配実験の消耗品代(飼育用品,飼育飼料など)にも研究費を充てる予定である.
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