研究課題/領域番号 |
23570032
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
河原崎 里子 首都大学東京, 理工学研究科, 客員研究員 (00450726)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2017-03-31
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キーワード | 林床多年生草本 / 長期モニタリング / 個体群動態 / 寿命 |
研究実績の概要 |
林床草本は長命な種が多いが、比較的短期間のモニタリングに基づく生活史の解明研究が多い。長期モニタリングデータから長命な林床草本の個体群動態に関する様々な生活史パラメーターを現実的な制度で検出し、生活史解明を行うことを本研究の目的としている。本課題以前に15年間の継続調査を行っているが、それに、本課題の5年間の調査を継続した。開花可能な個体サイズや花の数、結実数、実生数、生存数などの生活史パラメーターと、それらの年次変動を捉えるために長期モニタリングを行ったことで、これらのデータセットを得ることができた。林床のキク科多年生草本クルマバハグマを材料として長期観測を行ったところ、種子から個体群に加入した個体は10年では開花しないことが明らかになった。また、観測期間中、生存し続けている個体でも、個体サイズは必ずしも増加するわけでなく、時に、何年にもわたり減少することが明らかになった。生存率は、個体サイズに大きく依存し、大きな個体ほど生存率が高く、個体サイズが小さいほど、生存率は低く、また、顕著に平均余命が短くなることが明らかになった。種子はほとんど休眠しないことが野外操作実験から明らかになった。毎年の新規加入実生数には大きな変動があるが、その理由は、開花数や結実率、種子食害数など様々なことによるようである。 このような林床の長命な草本種に対し、陽地の多年生草本は林床よりも生育地の撹乱頻度が高いため相対的に寿命が短い可能性があると考えられる。対照研究として行った陽地性の多年生草本ヒメサユリの個体群動態について、一定の知見が得られたところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度後半から、今年度にわたり、本課題研究に専念できない時期があった。疾病とその後の静養、および自己都合(職務上のポジションの変更)によるものである。 なお、当初5年間の研究期間を設定したが、補助事業期間の延長を申請し、認められている。
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今後の研究の推進方策 |
長期モニタリングを行うことで、長命な多年生草本の個体群動態データセット生活史に関わる種々のパラメーターのデータを得ることを達成できた。また、比較対照を行うために陽地性のユリ数種の個体群動態、個体群構造などのデータを得ることができた。今後、これらのデータのとりまとめを行い、論文化を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度後半から、今年度にわたり、疾病および自己都合により、本課題研究の進行が遅れた。そのため、補助事業期間の延長を申請し、認可された。当初、5年間の課題を予定していたが、まとめの最終年が1年遅れることとなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度に持ち越した助成金はおもに研究のまとめに使う。具体的には、研究打ち合わせの旅費、および、論文の英文校閲、学会旅費等である。
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