多年生草本の成長と繁殖、寿命などの生活史における重要な特性を明らかにするために長期モニタリング調査を行なった。木本植物は年輪による年齢記録が得やすいことと、個体の外形が堅固であり成長が単調増加的であることから、齢と個体サイズ、あるいは繁殖との関係などが捉えやすい。それに対して、草本植物は地上部、時に地下部も、時間と共に入り替わったり消失したりするため、年齢記録を得ることが難しく、成長も時として縮小や停滞があることから年齢と生活史イベントの関係が捉えにくい。このため、個体を20年間にわたり追跡調査をすることによって、生活史特性を現実的な精度で捉えることを試みた。 長命な林床草本クルマバハグマの個体群は毎年、同様の景観を呈する。長期モニタリング調査を行うことで以下が明らかになった。調査期間中に実生から開花(繁殖)に至った個体は皆無であった。開花は個体サイズ(葉面積)に依存し、閾値となるサイズには多少の年変動があった。実生、および、5つのサイズの個体をクラス0~6としたときに、クラス0~3の6年後の生存率は20~45%で、平均余命は2~10年程度であった。サイズが大きくなるにしたがってこの値は改善し、クラス4、5の同生存率は55、70%、平均余命は30、40年であった。最大のクラス6は、ほとんどの個体が開花個体であり、同様に64%、77年であった。 10年後の成長を見ると3割程度の個体でサイズの縮小が見られた。クラス0~3では拡大成長するものの割合が大きいのに対し、クラス4以上では縮小の割合が上昇した。縮小しても生存可能であるからであろう。実生から開花にいたるまでの過程を、単調増加的な成長を示す複数の個体の成長をつなぎ合わせてモデル化したところ、開花まで25年程度を要することが明らかになった。 明地を好むヒメサユリの調査も行い、林床草本と比較した。
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