研究課題/領域番号 |
23570036
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
道前 洋史 北里大学, 薬学部, 助教 (70447069)
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研究分担者 |
岸田 治 北海道大学, 学内共同利用施設等, 助教 (00545626)
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キーワード | 表現型可塑性 |
研究概要 |
北海道に生息するエゾサンショウウオ幼生には標準型形態に加えて、捕食者(ヤゴ:ルリボシヤンマ)の存在で体長に対して相対的に尾高が高くなる捕食者誘導型と被食者(オタマジャクシ:エゾアカガエル)の存在で体長に対して相対的に顎の幅が広くなる被食者誘導型をもつ幼生が存在する。 平成24年度の実験では、標準型、捕食者誘導型、被食者誘導型の幼生を、それぞれ形態別に3つの処理(エゾサンショウウオ幼生のみ、エゾサンショウウオ幼生+ヤゴ、エゾサンショウウオ幼生+オタマジャクシ)に分けて野外設置したエンクロージャーで飼育した。各エンクロージャーでは個体別に生存期間、変態までの期間を記録した。 幾つかの特徴的な結果を示す。ヤゴ環境では生存期間は捕食者誘導型>被食者誘導型の順で長かった。ヤゴ環境では全ての個体が捕食で死亡したため、変態までの期間と変態時の体サイズは記録できなかった。オタマジャクシ環境では変態までの期間は捕食者誘導型>被食者誘導型の順で長く、生存期間は被食者誘導型>捕食者誘導型の順で長かった。エゾサンショウウオ幼生だけの環境では生存期間、変態までの期間は形態間でほとんど差がなかった。以上の結果は、オタマジャクシ環境内では生存時間と変態までの期間について誘導型間でトレードオフの関係があり、環境間(ヤゴ環境とオタマジャクシ環境)でも誘導型間でトレードオフの関係があることを示している。 防御型や攻撃型の進化については、その発現や維持にコストがかかるからこそ必要なときにしか発現しない戦略つまり可塑性が進化しやすいという仮説が指示されている。 本研究では、防御や攻撃のベネフィットコストを示し、その仮説を指示する結果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度では野外実験において攻撃形態と防御形態のトレードオフを様々な野外環境で調べることであったが、年内に順調に野外実験を終え、現在専門誌に本実験結果に関する論文を投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度では平成25年度の野外飼育実験を参考に、遺伝的に独立した集団を用 いた表現型可塑性間(攻撃形態と防御形態)のトレードオフを調査することとした。室内飼育実験と野外飼育実験を9月までに行う。その後データを整理・解析を行い、平成26年度中に専門誌への投稿を計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
分担研究者の所属先(北海道大学北方圏生物フィールド科学センター)では既に研究に必要な物品がそろっていること、旅費については前年度の繰越金を用いることで、平成25年度の助成金額500,000円は研究員または研究補助員の雇用にあて、本研究課題の推進を 図る。
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