研究課題/領域番号 |
23570041
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
伊藤 江利子 独立行政法人森林総合研究所, 北海道支所, 主任研究員 (20353584)
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研究分担者 |
長谷川 成明 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (60509280)
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キーワード | 豊凶現象 / 施肥 / 資源貯蔵 / 窒素 / 非構造性炭水化物 |
研究概要 |
豊凶現象を示す樹種において、養分飽和が樹体内の資源貯蔵に与える影響を明らかにするため、植栽4年後より連年施肥下で育成した37年生ウダイカンバ(養分飽和個体)に貯留された資源量の経年変化と季節変化を測定した。養分飽和個体と無施肥で育成した養分制限個体(対照個体、37年生)の各10個体から2011年(大豊作年)・2012年(大凶作年)・2013年(凶作年)の展葉開始前に、また各5個体から2012年と2013年の展葉終了後、盛夏、落葉直前の3回に樹体を採取し、各部位の非構造性炭水化物(NSC)濃度(可溶性糖類・デンプン)をフェノール硫酸法および酵素を用いた加水分解法により、また全炭素窒素濃度(N)を乾式燃焼法により測定した。 養分飽和個体は養分制限個体と比較してNが高く、NSCが低い傾向が認められたが、処理間差より経年変化の方が著しかった。展葉開始前の資源貯留状態は2011-2013年に掛けてNが減少しNSCが増加する傾向が認められた。貯留養分の季節変化はNSCで著しく、Nでは微かであった。NSCは展葉直後に著しく低下し、すべての部位で生育期間中に再増加した。ウダイカンバは個体全体を光合成産物である可溶性糖類の貯蔵器官として利用していることが示唆された。落葉直前と翌春の展葉開始前を比較すると、葉芽や枝の梢端部位では展葉開始前の方がNSCが高く、逆に根や幹では落葉直前の方が高かった。Nの季節変化は梢端でのみ認められた。旧年枝のNは展葉直後に低下し、生育期間中に漸増した。展葉開始前の葉芽Nは展葉後の葉Nの約半量の濃度であり、展葉時に旧年枝に貯蔵された窒素を転流していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究棟全棟で2013年12月から2014年3月まで耐震工事が実施された。期間中は粉塵、振動、機器退去のため分析がまったくできない状態であった。工事期間は通常分析を集中して実施する冬季4か月間に該当し、その期間に予定していた分析が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度であるが再来年度まで延長する。これは来春に二度目の豊作年を迎えることを踏まえ、豊作によって個体内資源が枯渇した後に凶作年を経て資源を再充填する状況を、記録的大豊作年と通常の豊作年という程度の異なる豊作において、繰り返し調査できる好機を得たためである。なお、担当者の分析技術の向上により、分析に必要な試薬費や人件費が節減されていること、また研究初年度の2011年度に予算の3割程度を保留して持ち越したことにより、当初予算額内で延長は可能な見込みである。
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次年度の研究費の使用計画 |
資源貯蔵状況の経年調査と季節変化調査を継続する。 分析試料の採取、調整、分析に用いる。
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