研究課題/領域番号 |
23570041
|
研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
伊藤 江利子 独立行政法人森林総合研究所, 北海道支所, 主任研究員 (20353584)
|
研究分担者 |
長谷川 成明 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (60509280)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
|
キーワード | 豊凶現象 |
研究実績の概要 |
豊凶現象の至近要因を説明する資源制限仮説に基づき、豊凶現象と連動する貯蔵資源の種類と貯蔵部位を明らかにするため、ウダイカンバ樹体内に貯蔵された資源量の経年変化を測定した。1974年に植栽され、植栽4年後より連年施肥(NPK)下で育成した施肥個体群と隣接林分において無施肥で育成した対照個体群の各10個体から2011年(大豊作)・2012年(大凶作)・2013年(凶作)・2014年(豊作)の展葉開始前に、また各5個体から2012-2014年の展葉終了後、盛夏、落葉直前の4回に樹体(根、幹、枝、葉、葉芽、繁殖器官)を採取し、各部位の非構造性炭水化物濃度(NSC)をフェノール硫酸法(可溶性糖類)および酵素を用いた加水分解法(デンプン)により、また全炭素窒素濃度(N)を乾式燃焼法により測定した(一部測定中)。施肥個体群はNが高くNSCが低い傾向が認められたが、豊凶や経年変化のパターンに違いは認められなかった。繁殖の有無と量は前年の盛夏以降落葉前に決まると推定され、豊凶と連動する年々変動を示した貯蔵資源は幹木部のNSCだった。幹木部のNSCは展葉終了後に低下して生育期間中に漸増する季節変動を示しつつ、大豊作年から時間が経過するにつれて濃度が高まる傾向が認められた。開花前年の落葉期までに作り終えられる雄花に対する投資資源は大きく、雄花のNSC量とN量は前年当年枝に対して大豊作時(2011年開花)には各々2.6倍と1.9倍、豊作時(2014年開花)には0.9倍と0.8倍に達した。展葉開始前の前年当年枝では開花年でNSC濃度が低い傾向も認められ、雄花が貯蔵NSCや当年NSCの強力なシンクとなっていると推察された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間を1年延長することで当初の目的であった豊作前後年の貯蔵資源の増減を測定することができる見込みである。
|
今後の研究の推進方策 |
豊作年翌年の凶作年の資源状況を測定し、豊凶現象と連動する貯蔵資源の種類と貯蔵部位を明らかにする。伐倒調査とアロメトリ式の併用により個体レベルの貯蔵資源量の推移を把握する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本課題ではウダイカンバの豊作年前後における貯蔵資源量の変化を調査することとしている。豊作年になるかどうかは自然条件に依存し人為的な調整は不可能である。課題最終年度の本年は豊作年となった。豊作年の翌年における貯蔵資源の枯渇状況を調査することで当初の目的が達成されるため、補助事業期間を1年延長する。そのため次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
資源量の経年調査に伴う、試料木伐倒のための非常勤職員の人件費、試料調整のための非常勤職員の人件費、養分分析のための試薬及び研究用ガスの物品費に充てることとしたい。
|