研究実績の概要 |
豊凶現象の至近要因を説明する資源制限仮説に基づき、豊凶現象と連動する貯蔵資源の種類と貯蔵部位を明らかにするため、ウダイカンバ樹体内に貯蔵された資源量の経年変化を大豊作(2011年)と豊作(2014年)を含む5年間に渡って測定した。1974年に植栽され、植栽4年後より連年施肥下で育成した施肥個体群と対照個体群(無施肥)を材料とし、樹体各部位の非構造性炭水化物濃度(NSC)と全炭素窒素濃度(N)を測定した。大豊作時のN投資量(雄機能15kgN/ha、雌機能3.6kgN/ha)は平年時葉窒素量の20%と5%に、NSC投資量(雄機能1.2tNSC/ha、雌機能0.4tNSC/ha、呼吸は含まない)は光合成産物量の10%と3%に相当した。施肥は各部位のN濃度を0.2%程度高めたが、豊凶周期と大豊作時の繁殖投資量には影響しなかった。また雄投資Nは開花年の葉量減少(3.2t/ha→2.6t/ha)で補償され、樹体内の貯留N資源(葉芽3.5kgN/ha、若年枝(ca.< 7年枝)30 kgN/ha、根<15kgN/ha)に相応する減少は認められなかった。豊凶と連動する年々の資源蓄積がNSCで認められた。樹体内NSC貯留(落葉期)の約50%を占める幹木部(e.g., 根30%、枝系20%)のNSC 濃度は2%の季節変動を伴いながら、凶作年間に徐々に高まり、貯蔵資源量が豊作後の1.3倍(0.45tNSC/haの増加)を超えた時点で再び豊作となった。以上よりウダイカンバの豊凶はNSC貯蔵状況によって決定し、NSCは樹体全体に蓄積されるものの、大容量かつ優先順位の低い貯蔵器官である幹のNSC濃度によって指標されることが明らかになった。
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