研究課題/領域番号 |
23570046
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
鈴木 石根 筑波大学, 生命環境系, 教授 (10290909)
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キーワード | 二成分制御系 / シアノバクテリア / シグナル検知 |
研究概要 |
生物は環境の変化を検知し、その環境に合わせて自身の代謝を調節する。バクテリア・カビ・植物においては、ヒスチジンキナーゼと呼ばれるセンサーキナーゼにより、細胞内外の環境の変化を検知する仕組みがある。ヒスチジンキナーゼの遺伝子破壊・過剰発現により、どの様に刺激でどういった遺伝子群が制御を受けるかについての情報は、かなり蓄積してきたが。センサー分子がどの様な分子機構で環境の変化を検知するかについては、これまで十分理解されているとは言えない。そこで、本研究ではこれまでに詳細に機能を解析したリン酸欠乏に応答するセンサーSphSのキナーゼドメインに、機能未同定のヒスチジンキナーゼのシグナル検知ドメインを融合したキメラ型のセンサーを合成し、SphSを欠失した細胞で発現した。キメラ型センサーが活性型であれば、SphSが本来発現を制御するアルカリフォスファターゼの活性が発現し、不活性になれば、アルカリフォスファターゼの活性は発現しない。この仕組みを活用して、キメラ型センサーのシグナル検知部位に様々な変異を導入することにより、シグナルの検知に重要な部位を明らかにすることができる。これまでに全てのラン藻に広く保存されたHik33とHik2のキメラセンサーを使って、Hik33のHAMPドメインとPASドメインが活性の制御に関わること、膜貫通ドメインは必要であるがその配列や数は関係ないことを見出した。また、Hik2は塩ストレス特に塩化物イオンに特異的に作用することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに複数のヒスチジンキナーゼのキメラ型センサーを構築した。その結果これまでの解析では明らかにできなかった、新規な結果を見出すことに成功している。
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今後の研究の推進方策 |
解析が不十分なヒスチジンキナーゼについてさらに解析を進める。解析の過程でマンガンイオンの欠乏がアルカリフォスファターゼの活性を著しく高める現象を見出しており。この解析を進めることにより、全く新規なこれまで予想されていなかったシグナルの伝達系路を見いだせる可能性が考えられ、たいへん興味深い。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度進める新規シグナル制御経路の解明は、アルカリフォスファターゼの活性を内在性のレポーターシステムとして利用するキメラセンサー系の本質に関わる重要なポイントである。その解析のため、次年度に経費を繰り越した。繰り越し分を活用して当該研究を進めるとともに、最終年度であるため論文発表を行うための経費に用いる。
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